米国への投資を迫るトランプ大統領

 1月23日、ダボス会議におけるオンライン講演で、トランプ氏は世界の企業に対して「米国で製品を作ってほしい」と呼びかけた。加えて、「そうしないなら、相対的に高い関税を負担しなければならない」と警告した。

 法人税率を引き下げる考えも示した。海外に進出した米国企業の国内回帰や、海外企業の対米投資積み増しを促す政策を推し進めようとしている。

 併せて、金利低下も重視している。トランプ氏はOPEC(石油輸出国機構)加盟国に原油価格の引き下げを求めた。米国でのシェールガス、オイル増産に規制緩和も進める方針だ。

 原油価格が下落すれば、米国のガソリンや石油関連製品の価格は下がり、インフレを鎮静化できる可能性がある。それは、米FRBが利下げを行うために必要なことだ。利下げによって家計、企業の資金調達が活発化し、個人消費や設備投資も伸びることが期待できる。

 トランプ氏は、アパレルや玩具などの軽工業から石油化学、鉄鋼、自動車まで、あらゆる産業において米国の優位性が高いと思っているのだろう。米国の経済成長率を向上させるために、関税や法人税率引き下げを企業への取引材料に使っている。

 そうした中でも、最も目を付けているのがAI分野だ。1月21日、「スターゲート計画」を発表した。これは、ソフトバンクグループ、OpenAI、オラクル、中東の投資ファンドMGXが、米国全土を視野に入れたAIインフラ事業に取り組むというもの。

 データセンター建設、AI開発、発送電システムの整備に約78兆円を投じる。この投資規模は、米マイクロソフトやグーグルより1桁多い。多額の資金を使って、エヌビディアの画像処理半導体(GPU)を優先的に確保しAI学習を加速させるのが狙いだろう。

 世界が覇権を争う先端分野で、ここで一気にライバルを引き離して利得を得ようとしていることが分かる。AI分野での成長は、国内経済を活性化することにもつながる。