【社説】トランプ関税とドル相場巡る矛盾Photo:Boy_Anupong/gettyimages

 ドナルド・トランプ米大統領の経済政策には矛盾が多いが、最大の矛盾の一つは、関税とドル相場の関係だ。トランプ氏は関税を好み、より多くの関税を課したいと考えている。しかし一方で、米国の輸出促進のためにドル安を望んでいる。この二つの願望は矛盾する。

 そのことは3日に明白になった。トランプ氏が先週末にカナダとメキシコ、中国に対して関税による猛攻撃に出たことで、金融市場は調整を強いられた。関税に関する当初のニュースを受けて大半の通貨に対してドル高が進み、グローバルなドル指数は上昇した。しかし、その後トランプ氏が関税導入を延期するとの情報が広がったことで、ドル指数は下げに転じた。当初のメキシコ・ペソ相場の下落幅は特に大きかったが、関税導入の延期を受けて持ち直した。

 他のすべての条件が同じだとすると、関税の導入がドル高を招くことは予測し得る。米国が外国製品の購入を減らせば、外国企業がドルを自国通貨に交換する額が少なくなるため、これらの外国通貨に対する需要は減少する。たとえトランプ氏の期待通りに関税の効果が表れ、米国内に工場を建設する企業が増えたとしても、投資資金としてのドルの需要が高まるため、ドル高になることが予想される。

 これはトランプ氏がよく口にするドル安願望と矛盾する。同氏は為替レートについて重商主義的な見方をしており、ドル安は強みだと考えている。ドル安が米国の輸出競争力を高めるのに役立ち、ひいては米国の貿易赤字の削減につながると思っている。