【人生をダメにする】「承認欲求の奴隷」になる人の特徴・ワースト1とは何か。
次々と新たなビジネスを仕掛ける稀代の起業家、佐藤航陽氏。数々の成功者に接し、自らの体験も体系化し、「これからどう生きるか?」を徹底的に考察した超・期待作『ゆるストイック』を上梓した。
コロナ後の生き方として重要なキーワードは、「ストイック」と「ゆるさ」。令和のヒーローたち(大谷翔平、井上尚弥、藤井聡太…)は、なぜストイックに自分に向き合い続けるのか。
『ゆるストイック』では、新しい時代に突入しつつある今、「どのように日常を過ごしていくべきか」を言語化し、「私自身が深掘りし、自分なりにスッキリ整理できたプロセスを、読者のみなさんに共有したいと思っています」と語っている。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

【人生をダメにする】「承認欲求の奴隷」になる人の特徴・ワースト1Photo: Adobe Stock

「ストイックさ」はあるか?

 人生がうまくいく人、ダメになる人。その両者には、どんな違いがあるのでしょうか。

 バーで知り合ったボクシング元世界チャンピオンに、
「井上尚弥選手についてどう思うか?」
 と聞いてみたことがありました。

 知らない人のために説明すると、井上尚弥選手は、世界で4階級制覇を達成し、バンタム級とスーパーバンタム級で4団体の王座を統一した日本を代表するボクサーです。

 彼は無敗の戦績(28戦28勝、25KO)を誇り、ボクシング専門誌『ザ・リング』のパウンド・フォー・パウンドランキングでも日本人初の1位に輝きました。

 圧倒的な実力と成長を続ける姿勢で「モンスター」と呼ばれる正真正銘のボクシング界の怪物です。

 私も趣味でキックボクシングをしていたので、試合を見てその異常な強さの秘密を知りたいと思っていました。

 その元チャンピオンは、次のような表現で井上選手を評しました。

彼は昔から素晴らしい選手だったけど10代の頃はまだ怪物というほどではなかった。
 すごかったのは、その「成長率」だ。
 普通のボクサーはチャンピオンになれば、練習量も減り、生活も緩んで、王座を守ることが最優先になる。
 多くのボクサーはチャンピオンになることを目標として、そこで満足して成長が止まってしまう。
 だが、井上選手は違った。
 彼は世界チャンピオンになっても10代の頃と同じスピードで成長を続けている。
 チャンピオンになることすら「通過点」として考えている人の動きだ。

 そのような話でした。
「成長率」と「通過点」。この言葉を聞いたとき、私はふと、井上尚弥選手に見られるものが、いま活躍している他の人物にも共通することに気づきました。

 大谷翔平選手、藤井聡太竜王・名人──。

 彼らに共通するのは「ストイックさ」「柔軟さ」が混ざった、独特の姿勢なのです。

「承認欲求の奴隷」になるな

 かつてのスターたちは、人間的な欲求に突き動かされていました。
「モテたい」「稼ぎたい」「認められたい」……。

 そんな欲望を堂々と語るビッグマウスの人たちが想像できるでしょう。

 しかし、大きな成果を上げた後、バランスを崩し、スキャンダルや問題に巻き込まれることも少なくありませんでした。

 彼らは、「承認欲求」によって突き動かされていただけなのです

 一方で、先ほど挙げた現代の新しい世代のスターたちは違います。
「修行僧」のように黙々と自己を磨き続けているのです。

 評価されることや、他者との勝ち負けに重きを置かず、ひたすら自分自身に向き合い続けている。
 そんなスタイルを持っています。

 そうした姿勢の中には、自分に厳しくストイックでありながら、他人に自分の価値観を押し付けない柔軟さが見て取れます。

 彼らは自分の目標を追い求めつつも、他者を否定することなく、その違いを尊重しています。

 この柔軟性を持ったストイックさこそが、「ゆるストイック」という生き方です。
 その生き方は、スポーツや将棋の世界に限りません。

 ビジネスやエンターテインメントなど、日常のあらゆるシーンにも応用できるのではないでしょうか。

 これからの時代は、「ゆるストイック」を軸に、世の中と向き合っていくべきなのです。

 逆にいうと、承認欲求の奴隷になるような人は、「自分に厳しくできない」「他者に厳しくする」という特徴がある可能性が高いでしょう

佐藤航陽(さとう・かつあき)
株式会社スペースデータ 代表取締役社長
1986年、福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年にIT企業を設立し、代表取締役に就任。ビッグデータ解析やオンライン決済の事業を立ち上げ、世界8ヵ国に展開する。2015年に20代で東証マザーズに上場。その後、2017年に宇宙開発を目的に株式会社スペースデータを創業。コロナ禍前にSNSから姿を消し、仮想現実と宇宙開発の専門家になる。今は、宇宙ステーションやロボット開発に携わり、JAXAや国連と協働している。米経済誌「Forbes」の30歳未満のアジアを代表する30人(Forbes 30 Under 30 Asia)に選出される。最新刊『ゆるストイック』(ダイヤモンド社)を上梓した。