配当定数より多い教員を
配置するのは「許されない」

 ところが、生徒が転校して80人に減ってしまうと、40人で2学級が編制され、教員定数は2人になってしまい、教員が1人過員状態になってしまうのである。面接調査に応じた県の人事担当者3名はそれぞれ、この過員状態は最も避けなければならない「最大の事故」として戒められていると語った。

 つまり、この県では、配当定数より多い教員を学校に配置することは、たとえ短期間であったとしても絶対に許されない、という運用が教員配置の実務で行われているのである。

 過員が許されない状況下では、特別支援学級には、正規雇用教員を配置しにくい。なぜなら特別支援学級は、学級編制の標準が8人と小さく、障害の種別(知的障害・肢体不自由・病弱・弱視・難聴・情緒障害)ごとに、1人しか子どもがいなくても1学級を開設しなければならず、学級減が生じやすいためである。

 X県のデータをみると、特別支援学級の数は2000年以降一貫して増加しており、2000年度には小学校429学級・中学校209学級だったが、2020年度には小学校1017学級・中学校472学級と、20年で2倍以上に増えていた。

 また、2020年度の学級規模を障害別にみると、知的・情緒障害は1学級の平均在籍数が約5人、その他は約1人となっている(表3-2)。それゆえ、例えば弱視の子どもが1人在籍している間は弱視学級が編制されるが、その子どもが卒業し他の弱視の子どもがいなければ、弱視学級は消滅してしまうことになる。

表3-2同書より転載 拡大画像表示