例えば、東京都市圏で東京駅から20~25km程度に位置するエリア(市街化区域)を見てみると、川崎市の宮前区・多摩区・麻生区の丘陵地に広がる住宅地(図表1-4)、東京都と埼玉県との境に位置する三郷市の住宅・工場・農地が混在した戸ケ崎、柏市の光ケ丘・青葉台・東山といった古くからの住宅団地エリア(図表1-5)では、駅からの徒歩圏外の調査地点で地価が下落しています。


同じように、多摩市や町田市でも、JR横浜線や小田急電鉄小田原線の各駅からの徒歩圏内の地点は地価が上昇していますが、徒歩圏外では下落しています(図表1-4)。
主要都市から少し離れると
鉄道駅徒歩圏内でも下落が見られる
一方で、鉄道駅から徒歩圏内でも、地価の下落した地点が多く見られるエリアもありました。
京浜急行電鉄本線の追浜駅(横須賀市)以遠、JR東北本線の東鷲宮駅(久喜市)以遠、東武日光線の杉戸高野台駅(杉戸町)以遠、東武東上線の北坂戸駅(坂戸市)以遠などです。
つまり、首都圏では、東京都心までの移動時間がおおむね1時間を超えない程度で、かつ鉄道駅から徒歩圏内のエリアにおいて、全体的に地価が上昇したと捉えることができます。
大阪都市圏でも、大阪駅前の貨物ヤード跡地の再開発が行われているうめきた周辺の再開発ラッシュや中心部でのタワーマンション建設が集中する大阪市では、地域全体に地価上昇地点が広がっていました。
しかし、都心から少し離れた大阪市生野区・東住吉区や東大阪市、八尾市、松原市あたり(図表1-6)になると、上昇した地点もあるものの、鉄道駅から徒歩圏内でも古くからある密集市街地などで下落地点が見られました。

これは、道路が狭く建て詰まりになっていたり、権利関係が複雑化したりしている土地も多いため、新規の開発を行おうにも行えないというのが1つの要因として考えられます。