ただ、札幌市は、2021年、2022年と平均価格が5000万円台、2023年も4980万円となり、2013年の3293万円の1.5倍と、地方都市の中でも最も上昇が著しい状況となっています。
札幌市は、他の都市と異なり地価上昇地点が都市周辺部にまで広がっていましたが、こうした地価上昇とともに、北海道新幹線の延伸が予定されており、オリンピック誘致計画があったこともあり、札幌駅周辺に林立したタワーマンションで供給された高額物件の出現も影響しているものと考えられます(写真2-1)。

購入目的の3割が
セカンドハウスという実状
例えば、「北8西1地区第1種市街地再開発事業」によって、地下鉄さっぽろ駅直結のタワーマンション「ONE札幌ステーションタワー」(全624戸)が2023年12月に竣工しました。
大和ハウス工業によると、販売価格が5160万円から5億円(平均坪単価は約400万円)、3割弱の住戸が1億円以上で、最高抽選倍率は15倍でした。
また、購入者は約7割が50代以上、約8割が1~2人の世帯、約4割が北海道外(主に首都圏)の居住者、購入目的はセカンドハウス用が約35%、投資用が約30%、実需が約35%だったそうです。

野澤千絵 著
札幌市でも、東京都心と同様に、再開発等によって新規に供給された富裕層向けの高額物件が平均価格を大きく押し上げていることがわかります。
それだけでなく、約35%がセカンドハウス目的の購入だったということは、札幌の拠点エリアのタワーマンションの3軒に1軒程度が、日常的には空き部屋という状態の可能性があるということになります。
また、竣工後、半年経った時点で複数の不動産情報サイトを見てみると、販売中や賃貸募集中の住戸も非常に多い印象となっています。
実需層によって住宅の入手困難さが深刻化する中で、こうした状況が都市の拠点エリアで起きている実態を見るにつけ、これが、「公共性」がある事業ということで様々な優遇措置や補助制度を活用できる市街地再開発事業によって大量に生み出すべき住宅なのかと、疑問に感じてしまうのは私だけでしょうか……。