上場企業の決算発表が続いている。これに対して、「円安によって企業が大幅増益」というトーンの報道が多い。株価上昇を支えているのも、そうした見方であろう。企業の利益増加は、本当に円安だけによって生じているのだろうか?そして、今後はどうなるのだろうか?以下では、円安が企業利益に与える影響を分析することによって、今後の見通しを考えることとしよう。

2013年3月期増益の大きな原因は、
大震災による落ち込みからの回復

 現時点では、2013年3月期の上場企業の営業利益は、12年3月期に比べて10%程度増益、経常利益は20%程度増益になると考えられている。

 まず第1に注意すべきは、仮にそうなったとしても、営業利益は、11年3月期に比べれば、まだ7.6%ほど低いことだ。11年3月期は、円高の期間である。円安になったにもかかわらず、現実の利益は円高期に及ばないのである。

 したがって、「増益」と言うが、そのかなりの部分は、東日本大震災の影響で12年3月期の企業利益が低すぎたことの反動にすぎない。つまり、13年3月期決算が「好調」と言われることのかなりの部分は、日本経済が震災の影響から脱却しつつあることを示すにすぎないのだ。そして、現在までのところでは、まだ震災前の状況を回復していないのである。

 また、2012年度においては、エコカー補助によって自動車の国内販売が大幅に増加したことにも注意が必要だ。自動車産業の増益のかなりの部分は、これに起因するものである。

円安の利益増加効果は、
輸出、国内販売、海外生産で異なる

 円安が利益にどのような影響を与えるかを見るために、つぎのような簡単なモデルを考えよう。