
“ベストパートナー”を探していた田辺三菱製薬の行き先が決まった。2月7日午後4時、三菱ケミカルグループは米投資ファンド・ベインキャピタルに田辺三菱製薬を売却すると発表した。売却額は約5100億円。同日、都内で緊急記者会見した三菱ケミカルGの筑本学社長は、「長年、同じ屋根の下で暮らした家族。大変に親孝行な子どもでもあり、大変感謝している」と別れを惜しんだが、ケミカルズ事業(化学事業)に「もっと収益力があればもう少し異なることも考えられた」と一抹の悔しさも滲ませた。
「化学とのシナジーが薄れてきた」(筑本社長)というのが切り離しの大きな理由だが、田辺三菱の売却で得た資金を化学事業に集中投資し、成長に結び付けるとの姿勢が好感されたのだろう。7日の終値が756円だったのに対して、10日の場が開けて間もなく791円に急騰。午後も770円台が続き、終値は771円だった。
ただ、三菱ケミカルGの収益構造を眺めれば、田辺三菱が消える影響は大きい。25年3月期で予想する営業利益2900億円のうち、610億円は田辺三菱を核としたファーマ事業で稼ぐとする。来期には約950億円の譲渡益が一時的に計上されるが、営業利益の5分の1強がなくなることとなる。
無論、三菱ケミカルGは百も承知。7日の会見で、筑本社長は「背水の陣」という言葉を繰り返し、「経営陣、社員ともに一丸となって取り組んでいく必要がある。(化学事業で)しっかり稼げるようにしていく」と声を振り絞った。