化学最大手の三菱ケミカルグループが11月に新たな中期経営計画を発表した。前トップ時代に経営が混乱した同社は、4月から本業の化学事業に明るい筑本学氏が新社長に就き、構造改革に着手した。特集『化学サバイバル!』の#2では、筑本氏を直撃。新中計を策定した狙いに加え、去就が注目される田辺三菱製薬の今後について聞いた。また筑本氏は、足元で再編が加速する石油化学事業について、「もう一段の再編がある」と明言。業界の盟主のトップが見据える石化再編の最終形とは。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)
三菱ケミカルが新中計を公表
「今までの中計は分からなかった」
――11月13日に2030年までの5カ年の中期経営計画を発表しました。本業の化学回帰という内容で、前任社長の経営の方向性とは大きく異なります。
今までの中期経営計画はよく分からなかった部分がありました。昨年に事業説明会がありましたが、経営方針が結局、何を言っているのか分からないと文句を言いました。自分自身が、これを皆さんにお見せして伝わるのか、何をやりたいのか、そう思いながら見ていました。結局、何をやりたいのか分からないし、どうやって達成するのかも分からないと言う声が多かったです。
今までは産業ガスと田辺三菱製薬はあるけれども、やっぱり祖業のケミカルはどうなったのかってことでした。何に集中するのかも分からなかった。今回の中計は、(化学事業に)集中しますという話です。
あとは、これは中期経営計画の発表の際にも言いましたが、(前社長時代の3年間で)経営と従業員の気持ちが離れてしまっていたのです。従業員もどんどん辞めていきましたし、大変でした。われわれはそれを反省して従業員と一緒にやっていかないといけなければいけません。
――筑本体制になってから役員の顔触れもがらりと変わりました。
執行役員は11人中8人を代えました。適材適所の観点で、一番優秀な人たちを選びました。毎週、この事業はどうする、この投資はどうするとか、人事制度や人材育成、資金の使い方、管理、従業員のガバナンスやコンプライアンス、ありとあらゆることをテーブルの上に載っけて平場で話しています。時間はかかりますが、みんながいろいろな意見を出してくれます。そして、良い方向に向かっていると思います。
お互いの信頼感という意味では今は本当に良いメンバー、強いチームです。野球に例えると、今年のペナントレースは絶対に取るぞという感じですね。途中で荒木さん(荒木謙執行役員)のような大型補強もやりました。
――だいぶ社内の雰囲気は変わってきたのでしょうか。
従業員の退職も止まりました。ただし、期待感はいつまでも持ちませんので、早く変革していきます。もちろん社員には、一人一人がプロの意識を持ってほしいとは伝えています。
――中期経営計画で、田辺三菱製薬はベストパートナーを探すという方針を打ち出しました。
次ページでは、ベストパートナーを探すと掲げるファーマ事業について、筑本氏が理想的な提携先のイメージを明らかにする。また、これまでの「大三菱ケミカル」路線に関しても総括する。そして、足元で再編が進んでいる石油化学事業については、「もう一段の再編が起きる」と明言。業界の盟主である三菱ケミカルのトップが見据える石化再編の最終形とは。