多方面から多重のチェックで
人事委員会が候補者リストを作成
さて、選考の主体となるのは、その都度組織される人事委員会である。その規模は総勢10人ほどで、主体となるのは関係する専門分野の教授である。それ以外に学部長、全学の参事会からの代表、学内の共同参画推進部門の代表なども加わる。
また、必ず学外からも1、2名のメンバーを選ぶ。委員会の規模が大きい一因は、人事は必ず国際公募によるためである。有名大学では国内外からかなりの数の応募があるので、選考を進めるうえで人手がいる。
選考方式は多面的である。まず、委員会で応募者の提出した書類や研究業績などを審査する。そのうえで、候補を有望な数人に絞りこみ、本選考に移る。本選考では、有望候補者は人事委員会の面接を受けるとともに、学内に対して広く自らをアピールする。
すなわち、公開の場で教育・研究についての抱負を開陳し、講演によって自らの研究を紹介して聴衆からの質疑に答える。また、学生相手に模擬授業をも行う。これと並行して、人事委員会は外部の専門家に有望候補者についての所見を求める。
以上の手順を経て、委員会は選考結果として最終候補者リストを作成する。最良と見る候補者を3人程度、推薦順位をつけて挙げたものである。リストは学部の教授会、さらに参事会へと回付される。それぞれの場で選考経過の是非が検討され、候補者の良否が審議される。多方面からの多重のチェックが入るわけである。
そして最終的な判断を下すのは学長である。学長は最終リストから、自らが最適と考える候補者を選ぶ。その際、人事委員会の推薦順位は勘案しなくてよい。さらに場合によっては、どの候補者も学長の眼鏡にかなわないことがある。その場合、人事は振り出しに戻る。
これほど周到な手順をふめば、たしかに内輪の馴れあいの働く余地は小さかろうと納得させられる。他方、たいへんな時間と労力を要するのも事実で、ドイツの大学の友人も負担の大きさをこぼしていた。
だが、だからといって選考手続きを簡略化すべきだという声はないらしい。人事の手間暇を惜しまないという自己規律が結局は大学の将来を担保するという認識が、関係者の間で浸透しているのである。