一方、わが国の国立大学では教授と准教授を合わせた比率は60.1パーセントである(文科省2024)(注2)。したがって、教授という肩書きだけで日独を単純に比べることはできない面はある。

日本の教授は雑務に追われて
研究時間がないというのは本当か?

 ともかくも、これほど格差があれば、たとえばドイツの大学と国際交流をするといってもうまく進まない。研究者として対等な付き合いが不可能だからである。

 加えて、言語面の格差もある。ドイツにかぎらずヨーロッパ諸国では、研究者なら普通、英語による意思疎通ができる。

 日本学研究者の場合、ほとんどの者がこれに加えて日本語を流暢に操る。残念ながら、同じことは日本側の人文系研究者には必ずしもあてはまらない。

 あるいはまた、ドイツとは違って日本では、教授は雑務に追われて研究時間がないから、という声があがってきそうである。しかし、大学人の職務で管理業務が増える傾向にあるのはドイツとて事情は同じである。

「教授の仕事が教育・研究だったのは昔の話、今は教育・研究マネジメントが仕事」という自嘲の声があるやに聞く。

 さらに加えて、ドイツの大学での教育負担は国際的に見て高いという定評がある。というわけで、ドイツの大学教授が勤務時間のうち研究にさけるのは20.8パーセントにすぎない。助教授でも26.2パーセントにとどまる(Fabian et al.2024:14)(注3)。ちなみに、わが国の大学教員は32.9パーセントを研究にさいている(文科省2023:15)(注4)。

 昨今、わが国の研究力凋落について議論が盛んだが、研究者の質における格差も勘案する必要がありそうである。理系では国際的通用性が高いだけに事情は異なろうが、人文系などについては看過できまいと考える。

注2 文部科学省,2024,『文部科学統計要覧 令和5年度版』,https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/002/002b/1417059_00008.htm,[2024年5月30日]

注3 Fabian, Gregor et al., 2024, Barometer für die Wissenschaft: Ergebnisse der Wissenschaftsbefragung 2023, Berlin: DZHW, https://www.wb.dzhw.eu/downloads/wibef_barometer2023.pdf,[2024年5月29日]

注4 文部科学省,2023,『令和4年版科学技術・イノベーション白書』,https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpaa202201/1421221_00005.html,[2024年4月2日]