芸術は「鑑賞型」より
「実践型」がおすすめ
趣味にはさまざまなジャンルがありますが、これから始めようとする人にぜひおすすめしたいのは芸術です。
芸術のない生活は、潤いのない殺伐たる生き方のような気がします。
ここでいう「芸術」には音楽や美術だけでなく、詩や小説、俳句や短歌などの文学、絵画や写真、さらには演劇や工作、園芸なども含まれます。
経済や経営、法律といったものが社会に必要なのは理解していますが、それだけで人は幸せになれるわけではありません。いくらお金があっても、それだけではきっと人生は退屈なものに終わるでありましょう。
私にとって、仕事は生きていくためにやらなくてはいけないエッセンシャルな基底であり、芸術は人生を豊かにするために不可欠な上部構造というようなものと捉えています。アートは、一見すると不要不急の娯楽のように見えますが、実は生きる上での切実な営みなのです。
芸術趣味は大きく鑑賞型と実践型に二分されます。
すなわち、音楽を聴く、絵画を見る、芝居を鑑賞する、などもっぱら受け身の形で芸術に接する場合と、音楽なら演奏する、絵なら描く、芝居なら自ら演技する、などなど実践的・主体的に楽しむという場合がありますが、私は圧倒的に後者の主体的な接し方をおすすめします。受け身でなくて、主体的にこれに取り組む、芸術はそうあって始めてその本格的な楽しみを教えてくれるように思うのです。
そもそも音楽や絵画などの芸術を鑑賞する人たちの多くは、プロの表現者に対して、無限の憧憬を抱いているのに違いありません。ああ、素晴らしいなあと思い、それによって心を慰められたり、豊穰なものにしてもらったりもする。
されば、できることなら、自分も同じように表現してみたいけれども、そこまでの才能も技術もないし、訓練を積んだわけでもない。とてもじゃないが、自分が満足できるようなレベルにまでは到底たどり着けそうもない……とそんなふうに思っている人が大半のような気がします。