楽しそうなシニア男性写真はイメージです Photo:PIXTA

年齢を重ねるにつれて意欲や行動力は薄れ、人生でワクワクすることは減っていく。そんな人こそ改めて自身の「趣味」を見つめ直してほしい。趣味は本気で取り組むからこそ楽しくなり、自己実現にもつながる。趣味にかけるただならぬ情熱と熱意を持つ著者が、趣味を通じて「自分らしい生き方」を考え直すヒントを記す。本稿は、林 望『結局、人生最後に残る趣味は何か』(草思社)の一部を抜粋・編集したものです。

「自分の人生を生き直す」
という心がけで趣味を発見せよ

 趣味ということについて、私はよくこんなことを訊ねられます。

「これから新しく趣味を始めるとしたら、何がいいでしょうか?」

 つまり、何か趣味を豊かに持ちたいけれど、いままで仕事ばかりしていて無趣味な人生だったので、いったいこれから何をしたらいいか、そこがわからないというわけですね。

 そんな質問をされたとき、私は「自分が、たとえば高校生だった時分に、やりたかったことを思い出せばいいんじゃないですか」とアドバイスするようにしています。

 どんな人でも、生まれてからずっと無趣味だったということはないはずです。例えば、子どもの頃はプロ野球選手に憧れていた、中学時代は本が好きで小説家になりたかったなど、自分史を振り返ると、若い時代に好きだったことが、必ず1つや2つはあったはずなんですね。

 しかし、現実には、受験のために勉強に集中しなくてはならなかったり、学校を卒業して社会人として働くのにあくせくばかりしているうち、いつの間にか目の前の課題や生活に追われて、若かりし日の夢や自己実現は果たされないまま過ごしてしまって……という人がじっさい多いのではないかと思われます。

 そんな中で、自分の時間を取り戻そうという意識を持ち、趣味を始めようと思った「今」は、非常に大きなチャンスです。「まだ若くて未定形の自分」が、漠然とやりたかったこと、夢見ていた未来を思い出してみましょう。

 その頃スポーツの選手になりたかった人は、ただちに何の競技でもあれ、スポーツにとりつけばよいのだし、画家になりたかった人は、絵の具でもクレヨンでも買って、まずは自己流でもいいから、絵を描くことに取りついてみればいい。

 とにかく「もういちど、自分の人生を生き直す」という心がけで、趣味を発見するのです。

振り返ると人生には
常に音楽が共にあった

 私自身を振り返ると、小学校に入学した頃から、ヴァイオリンを習っていました。どうしてヴァイオリンであったのかということについては、自分ではまるで記憶がないのですが、なんでも母などに聞いたところでは、別段親が習わせたのではなく、私のほうから、どうしてもヴァイオリンを習いたいと言い張ったのだそうです。