東日本大震災によって日本列島は地震や火山噴火が頻発する「大地変動の時代」に入った。その中で、地震や津波、噴火で死なずに生き延びるためには「地学」の知識が必要になる。京都大学名誉教授の著者が授業スタイルの語り口で、地学のエッセンスと生き延びるための知識を明快に伝える『大人のための地学の教室』が発刊される。西成活裕氏(東京大学教授)「迫りくる巨大地震から身を守るには? これは万人の必読の書、まさに知識は力なり。地学の知的興奮も同時に味わえる最高の一冊」と絶賛されたその内容の一部を紹介します。

【京大名誉教授が教える】「南海トラフ巨大地震に富士山は耐えられず、噴火する」…驚くべき「大災害のストーリー」とは?画像はイメージです Photo: Adobe Stock

巨大地震と富士山

 恐ろしいことに地震は火山の噴火へとつながることもあります。

 南海トラフ巨大地震が起きることによって、富士山が噴火するだろうと予測されています。

 京都から東京方面に東海道新幹線でいくと、富士川を渡る手前まではトンネルが多い。それが富士川周辺でガバッと開けるので、山がなくなるわけです。

 それはそこに断層があるからです。その断層は「富士川河口断層」といいます。

 富士川河口断層は南にいくと海(具体的には駿河湾です)に入り、そのまま南海トラフにつながっています。

 つまり富士川河口断層は、南海トラフがそのまま上陸した地点にあるわけです。富士川河口断層は南北に走っていて富士山のほうまで伸びています。ど真ん中ではなくて、ちょっと西側ですが。

 そして富士川河口断層は直下型地震を引き起こす活断層なのです。

南海トラフ巨大地震で富士山が揺すられる

 南海トラフ巨大地震は東海地震、東南海地震、南海地震という三つの区分があり、そのなかで最も東にあるのが東海地震です。

 ということで、南海トラフ巨大地震が起きると、きっと富士山の一帯も大きく揺すられることになります。実は、富士山は2011年3月の東日本大震災ですでに揺すられているので、大きく揺らされるのは2回目というわけです。

 僕は、2回目は耐えきれないのではないか、つまり噴火してしまうと思っています。

 これには歴史的な証拠もあって、1703年の元禄関東地震と1707年の宝永地震の二つです。

 特に宝永地震のあと、同じ年に富士山は宝永噴火という大噴火をしています。地震が起きてから49日後のことでした。

 まさに巨大地震が噴火を誘発したのです。これで大変な災害のストーリーができ上がってしまいましたね。

 2030年代になにが起きるかを再確認しておきましょう。まず南海トラフ巨大地震が起きるでしょう。これはマグニチュード9.1の巨大地震です。その数か月後に富士山が噴火する可能性が高い、ということです。

参考資料:【地震大国・日本で知りたいこと】「あなたはどこに住みますか?」と質問されたときに、京大名誉教授が「選んだ都市」とは?

(本原稿は、鎌田浩毅著大人のための地学の教室を抜粋、編集したものです)

鎌田浩毅(かまた・ひろき)

京都大学名誉教授、京都大学経営管理大学院客員教授、龍谷大学客員教授
1955年東京生まれ。東京大学理学部地学科卒業。通産省(現・経済産業省)を経て、1997年より京都大学人間・環境学研究科教授。理学博士(東京大学)。専門は火山学、地球科学、科学コミュニケーション。京大の講義「地球科学入門」は毎年数百人を集める人気の「京大人気No.1教授」、科学をわかりやすく伝える「科学の伝道師」。「情熱大陸」「世界一受けたい授業」などテレビ出演も多数。ユーチューブ「京都大学最終講義」は110万回以上再生。日本地質学会論文賞受賞。