そう気づかせることが目的ですから、もし部下が新聞を読んでいなかったり、本を読んでいなかったりしても、叱る必要はないので気をつけてください。
ただ根気強く、適度に質問をくり返して、日常的に部下の意識を高めましょう。
「あの人ならどう考えるだろう?」
そもそも新しい発想、新しいアイデアというのは、そう簡単に生まれるものではありません。
「斬新なアイデアや周囲が驚くような企画も、まったくの無から有を生んでいるのではなく、必ずどこかにネタ元があるのです」
これは、起業家・俣野成敏氏の言葉です。
俣野氏は、何かを参考にしたり、モノマネしたりしてアイデアを生み出す「大人のカンニング」を推奨しています。
もちろん、すでにあるものをそのまま使うのは、知的財産権の問題があるので注意が必要です。
ただ、既存のものを着想のヒントにするほうが、まったくのゼロから絞り出すよりも、いい発想につながりやすいのです。
発想のヒントになるものは、探せばたくさんあります。
その事実に部下が気づけるような「いい質問」とは、どんなものでしょうか?
たとえば、iPhoneやMacBookなどApple製品が好きな部下なら、
「スティーブ・ジョブズなら、どう考えるだろうね?」
と、稀代の天才の思考をマネてみるよう提案するのはどうでしょう。部下が憧れている人、尊敬している人を登場させて、「マネしてみたらどうだろう?」とすすめるわけです。
あまりにも雲の上すぎる人だとイメージが湧かないのであれば、
「業界最大手のA社なら、どんなデザインを提案すると思う?」
「ウチの部トップのBさんなら、このプレゼンで何を目玉にするだろう?」
「君の尊敬するC先輩なら、どんな工夫をするだろうか?」
と、より身近なところから対象を引っ張ってきてもいいと思います。
実際にその人がどうするかが問題なのではなく、部下のものの見方や考え方の切り口を変えるための「きっかけ」を作ることが目的です。
「自由に考えていいんだよ」と上司に言われてもピンとこない部下が、自分の殻を破って、思いのままに発想をふくらませることができるように、「いい質問」で手助けしてあげてください。