アドバイスは双方にとって
“非人間的な発想”である
しかし私は、次のことを確かに言っている。アドバイス・モンスターが機会をとらえて顔を出し、あなたが人に対して何をすべきか教える、または人が墓穴を掘らないよう手助けする、またはその場を仕切るというとき、その振る舞いの根本には、私はこの人たちより優れているという考えがある。
私はもっと素早く動ける、あるいはもっと頭がいい、あるいは経験がある、あるいは年上だ、あるいは自信がある、あるいは熱心だ、あるいはクリエーティブだ、あるいは戦略的だ、あるいは正しい、あるいは……。
同時にあなたは、こうも思っている。この人たちには足りない点がある。賢さが足りない、効率性が足りない、聡明さが足りない、能力が足りない、技能が足りない、勇気が足りない、オリジナリティが足りない、道徳性が足りない、寛容さが足りない、信頼性が足りない、○○○(何であれ自分がこだわっている点)が足りない、だからこの仕事ができないのだ、と。
あなたは、この人たちは不十分だ、と言っているのだ。
この人たちは不十分だ。
この人たちは不十分だ。
胸に手をあてて、このことを認めるのがどんなに不快か感じてほしい。なんて耐えられない、希望のない、気持ちがなえる考えだろうか。そして、相手をどれだけ失望させる考えだろうか。本質的に、双方にとってどれだけ非人間的な発想かわかるだろう。

マイケル・バンゲイ・スタニエ著、深町あおい訳
しかし、もしあなたがコーチらしくなれたら、このサイクルを断ち切ることができる。相手の能力を削ぐどころか、より多くを引き出せる。
だからアドバイス・モンスターを手なずける術が必要なのだ。これは「難しい変化」なので、自分に「やめろ、やめろ、やめろ」と言い聞かせるだけでは、残念ながら効果はない。別のアプローチをとらなければならない。
それは、「手なずける」ということだ。追い払うのでも破壊するのでも、無慈悲に消滅させるのでもない。人間である限り、アドバイス・モンスターは必ずついてくる。
そしてモンスターなりに役割を果たそうとするので、これを駆除することはできない。しかし、手なずけて、自分にもチームのメンバーにも役に立たない行動をとらなくなるようにすることはできる。