部下が次々と辞めていく…離職率の高いリーダーに決定的に欠けている視点写真はイメージです Photo:PIXTA

次々と部下が辞めていく……。もし、あなたがそんな悩みを抱えているとしたら、一度立ち止まってみましょう。キャリアをつくるのは自分だけではありません。組織において、あなたが上司という立場なら、部下のキャリアづくりも重要な役割です。他者のキャリアづくりの支援に必要な要素とは何でしょうか?

※本稿は、徳谷智史『キャリアづくりの教科書』(NewsPicksパブリッシング)の一部を抜粋・編集したものです。

メンバーが成長するチームのマネジャーがしていること

 本稿では、他者のキャリアづくりの支援に必要な要素を説明していこう。

 これまでエッグフォワードが、多くの組織を支援している中で重要だと感じているのは、「組織の方向性」と「個人の成長」をいかに紐づけるかだ。組織の方向性をふまえて実務の要素に分解し、メンバー個人の「ありたい姿」や成長と紐づけて、機会を提供していく。

 たとえば、こんなシーンに出会ったことはないだろうか。

 メンバーから「会社、組織がどこに向かっているのか見えにくい」「この事業・仕事が何のためになっているのかが実感しにくい」など、「組織の方向性」に疑問が上がる。

 一方では、「この組織だと自分の目指していることが実現しづらい」「今の環境だと自分が成長しているとはあまり思えない」など、今の環境では「個人の成長」がなく、キャリア上の意味を見出しづらくなっている。

 そんなときは、こんな返答で濁されがちだ。組織への疑問に対しては「経営方針だし、組織としての目標だからね」「たしかに。経営は何を考えているんだろうね」。個人のキャリアに対しては「まずは目先の成果を出してから考えようよ」「いいからやってみよう。そのうちやりたいことも見えてくるから」。

 当然、なんの解決にもならない。メンバー側の不安は加速し、本来ならよい機会が提供されうる組織で、個人も、組織も、お互いのゴールを両立できたはずなのに、認識の相違や誤解から、結局、離職してしまう。

 メンバーとともに働いているマネジャーは、あらためて、自身に問い直してほしい。

 会社が目指す姿と、事業の意味合いを、メンバーが納得できるレベルで説明できているか?
 個々のメンバーのキャリアの志向を理解できているか?
 そのうえで、組織の方向性とメンバーのキャリアを紐づけて、機会を提供できているか?

 まだ、イメージがわかないかもしれない。不動産領域での事例を3つほど挙げてみよう。

 ほぼ同様の業務をしているのに、まったく異なる3人の行動差分に注目してほしい。

 マネジャーのAさんは、個人業績は高く、毎月自身の目標を達成しているハイパフォーマーだったが、チームの離職率が非常に高く、経営としては心配していた。

 具体的に、どんなマネジメントをしているか確認してみたところ、メンバーにしっかりと成果を出してもらうために、自身の経験を活かし、チームに課せられた目標をKPIにブレイクダウンして、各メンバーに落とし込んでいる。