次々と部下が辞めていく……。もし、あなたがそんな悩みを抱えているとしたら、一度立ち止まってみましょう。キャリアをつくるのは自分だけではありません。組織において、あなたが上司という立場なら、部下のキャリアづくりも重要な役割です。他者のキャリアづくりの支援に必要な要素とは何でしょうか?
メンバーが成長するチームのマネジャーがしていること
本稿では、他者のキャリアづくりの支援に必要な要素を説明していこう。
これまでエッグフォワードが、多くの組織を支援している中で重要だと感じているのは、「組織の方向性」と「個人の成長」をいかに紐づけるかだ。組織の方向性をふまえて実務の要素に分解し、メンバー個人の「ありたい姿」や成長と紐づけて、機会を提供していく。
たとえば、こんなシーンに出会ったことはないだろうか。
メンバーから「会社、組織がどこに向かっているのか見えにくい」「この事業・仕事が何のためになっているのかが実感しにくい」など、「組織の方向性」に疑問が上がる。
一方では、「この組織だと自分の目指していることが実現しづらい」「今の環境だと自分が成長しているとはあまり思えない」など、今の環境では「個人の成長」がなく、キャリア上の意味を見出しづらくなっている。
そんなときは、こんな返答で濁されがちだ。組織への疑問に対しては「経営方針だし、組織としての目標だからね」「たしかに。経営は何を考えているんだろうね」。個人のキャリアに対しては「まずは目先の成果を出してから考えようよ」「いいからやってみよう。そのうちやりたいことも見えてくるから」。
当然、なんの解決にもならない。メンバー側の不安は加速し、本来ならよい機会が提供されうる組織で、個人も、組織も、お互いのゴールを両立できたはずなのに、認識の相違や誤解から、結局、離職してしまう。
メンバーとともに働いているマネジャーは、あらためて、自身に問い直してほしい。
会社が目指す姿と、事業の意味合いを、メンバーが納得できるレベルで説明できているか?
個々のメンバーのキャリアの志向を理解できているか?
そのうえで、組織の方向性とメンバーのキャリアを紐づけて、機会を提供できているか?
まだ、イメージがわかないかもしれない。不動産領域での事例を3つほど挙げてみよう。
ほぼ同様の業務をしているのに、まったく異なる3人の行動差分に注目してほしい。
マネジャーのAさんは、個人業績は高く、毎月自身の目標を達成しているハイパフォーマーだったが、チームの離職率が非常に高く、経営としては心配していた。
具体的に、どんなマネジメントをしているか確認してみたところ、メンバーにしっかりと成果を出してもらうために、自身の経験を活かし、チームに課せられた目標をKPIにブレイクダウンして、各メンバーに落とし込んでいる。