この状況をその時の担当医に知らせたら、「そうなんですか。でも、失語症の方は、相手の言った言葉をそのまま繰り返して言うことしかできないんです」とのことでした。あれ?
この頃から私は、この「言葉を絞り出して、話している状況とはなんだろう?」と思い始めました。その頃の夫は、何かを言おうとして頭を捻ってることはよくありましたが(大抵は最初の一文字くらいしかでてきませんでした)、誰かと同じ言葉を繰り返して発語したことは、一度もありません。おかしいな。
また失語症の方にとっては、抽象的な言葉を発するが難しいのだそうです。だとしたら、数日前には「ありがとう」と私たちに向かってお礼を言っていた、あれはなんだったんだろう?
さらに、元気だったころの夫は「めしどうすんのや?」とよく言っていましたが、「ごはん」という礼儀正しい言葉は滅多に使いませんでした。
これも私にとっては「おもしろい」と思ったことの1つです。もしかしたら脳がリセットされて、子供の頃のおばあちゃんのしつけが復活したのかしら?あるいは、看護師さんが「ごはんですよー」といって持ってきてくださるので、そこで学習したのかな?
素人なので、わからないことばかりなのですが、特にこの言葉に関しては、この状況はどういうことで、なぜこうなったのかを知りたくて、誰か説明してくれないかなと素朴に思いました。
血栓が自然に溶けて
血流が復活!
そうこうしているうちにリハビリも本格化して、動かないはずの右手は、多少の力がついたとのことで、筋肉に少し張りが戻ってきました。頭蓋骨復元手術の2日後には、右足も多少動かせるようになりました。弘前大学医学部附属病院一階にあるリハビリセンターで立つ練習をした時の様子は、あとで聞いて笑ってしまいました。
この頃、麻痺している右手が邪魔にならないよう、肩から三角巾をかけて右腕を保護していました。リハビリを開始して、左手だけで平行棒に掴まって立った時、右手を押さえている三角巾の乱れが気に入らなかったらしく、それを自分で直したそうです。もちろん、左手で右側の布の乱れを治している間は、何にもつかまらない状態なわけです。