
われわれの生活を支えている道路や上下水道などの老朽化が深刻化している。少子高齢化などによる財政難で公共インフラの修繕や更新が滞れば、埼玉県八潮市で起きた道路陥没事故のような悲惨な事故は再び起きかねない。そこで、ダイヤモンド編集部は、全国の自治体を対象にインフラ更新の余力を検証する「インフラ危険度ランキング」を作成。インフラの老朽化が深刻化する自治体はどこか。(ダイヤモンド編集部 田中唯翔)
八潮市の事故は氷山の一角
インフラ更新の遅れが各地で深刻化
2025年1月28日、埼玉県八潮市で交差点の道路が陥没する事故が発生した。陥没した地面に大型トラックが転落。ドライバーがいるとされる運転席部分はいまだ地中の下水管の中に閉じ込められており、捜索は難航している。道路の約10メートル下にある下水管に穴が開いて土砂が流れ込み、地面の下に空洞ができたことが道路陥没の原因と考えられている。
下水道の耐用年数は50年とされているが、事故現場の下水管は敷設から42年が経過しており、老朽化が進んでいた。この事故を受け、国土交通省は再発防止策を検討する有識者委員会を2月21日に発足させるなど、全国のインフラ再点検に乗り出した。
今回の八潮市の道路陥没事故は一例に過ぎず、上下水道やトンネル、道路橋などの公共インフラは深刻な老朽化問題を抱えている。高度経済成長期に一斉に整備をしたことで、多くの公共インフラが同時に耐用年数を迎え、更新時期が差し迫っているからだ。
例えば八潮市の道路陥没のトリガーとなった下水道を例に挙げる。建設後50年以上が経過した下水道管は、23年時点で全体の8%ほどだが、30年に16%、40年には34%に増加していく。
さらに深刻なのは道路橋だ。敷設から50年以上が経過している割合は23年時点で37%であり、現時点で下水道の40年推計を上回っている。加速度的に増加していくことが予想され、40年には75%が敷設50年以上となる見通しだ。
東洋大学大学院経済学研究科の根本祐二教授の試算によれば、更新時期を迎えた公共インフラの更新に必要な費用は年間約12.9兆円とされる。この費用は無論、一度きりのものではなく毎年継続的にかかるコストだ。
公共インフラの整備主体である地方自治体は、今後多額の修繕費用を負担する必要がある。そのため、更新費不足に悩まされる自治体が出てくるのは必至だ。
そこでダイヤモンド編集部は、全国の自治体を対象にインフラ更新の余力を検証する「インフラ危険度ランキング」を作成した。
20~22年度の市町村別決算状況調を基に(1)インフラや公共施設の新設や整備に充てられた普通建設事業費に占めるインフラの更新費の比率を表す「平均更新費比率」、(2)使途が特定されない財源に占める人件費、扶助費、公債費などの毎年経常的に支出される経費の比率を表す「経常収支比率」、(3)その自治体のもともとの財政の豊かさを表す「財政力指数」、の3つの指標からインフラ更新の余力度合いを算出したものになる。
「インフラ危険度ランキング」の上位にある地方自治体では、今後インフラの更新費用の一部を確保できなくなる恐れがある。更新が滞れば、八潮市の道路陥没事故のような悲惨な事故が発生するリスクも否定できない。
では、どの自治体が該当するのか。次のページでインフラ更新の余力が不足しているワースト100の自治体を一挙に公開する。