人口戦略会議は4月、消滅可能性自治体が10年前の「896」から「744」に減少したと発表した。しかし、これは外国人増加分の寄与が大きい。その部分を考慮すれば実態は変わっていないと言ってよい。人口減少、少子高齢化は自治体を窮乏させ、行政サービス、地域経済にも影響を及ぼす。人口の自然減ペースを抑制できなければ、各自治体が人口の奪い合いをしているにすぎない。特集『人も財政も消える街』(全6回)の#1では、消滅可能性自治体の全体像と人口減少、少子高齢化の自治体に与える影響について取り上げる。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
消滅可能性自治体数は
本当に減少したのか
「消滅可能性都市という名称は住民に誤解されやすい。財政破綻する街なのかと思われている」
10年前、現日本郵政社長の増田寛也氏が座長を務めた日本創成会議の報告書、いわゆる“増田レポート”で消滅可能性都市とされた自治体の担当者は苦笑いする。
日本創成会議の場合、消滅可能性都市とする判断基準は、同会議の人口推計で2010年から40年の間に20歳から39歳までの若年女性人口が50%以上減少するというものだった。
あくまで人口が基準であり、財政状態は基準となっていない。だが、消滅可能性都市という言葉のイメージから、冒頭の自治体では財政が破綻、消滅すると受け取る住民が少なからずいたという。
それほど、“消滅可能性都市”のインパクトは大きかった。
そして10年後の今年4月24日、日本製鉄名誉会長の三村明夫氏が議長、増田氏が副議長を務める人口戦略会議は“消滅可能性自治体”を発表した。
消滅可能性自治体とする基準は消滅可能性都市と同じである。増減率の対象期間が20年から50年へと、10年後にずれただけだ。日本創成会議は896の自治体を消滅可能性都市とした。これに対し、人口戦略会議は744の自治体を消滅可能性自治体とした。
なお、日本創成会議では、東日本大震災後間もない福島県の自治体を対象としていなかった。そのベースで比較すると人口戦略会議の消滅可能性自治体数は711となる。
消滅可能性自治体数は減少したのだから状況は改善されたのか――。実はその答えは「否」である。
それはなぜか。次ページ以降、そのカラクリを解き明かすとともに、人口減少、少子高齢化の自治体へのインパクトを検証する。