【投資家が大損】「1873年恐慌」に学ぶ“お金のメカニズム”
「地図を読み解き、歴史を深読みしよう」
人類の歴史は、交易、外交、戦争などの交流を重ねるうちに紡がれてきました。しかし、その移動や交流を、文字だけでイメージするのは困難です。地図を活用すれば、文字や年表だけでは捉えにくい歴史の背景や構造が鮮明に浮かび上がります。
本連載は、政治、経済、貿易、宗教、戦争など、多岐にわたる人類の営みを、地図や図解を用いて解説するものです。地図で世界史を学び直すことで、経済ニュースや国際情勢の理解が深まり、現代社会を読み解く基礎教養も身につきます。著者は代々木ゼミナールの世界史講師の伊藤敏氏。黒板にフリーハンドで描かれる正確無比な地図に魅了される受験生も多い。近刊『地図で学ぶ 世界史「再入門」』の著者でもある。

【投資家が大損】「1873年恐慌」に学ぶ“お金のメカニズム”Photo: Adobe Stock

「1873年恐慌」に学ぶ”お金のメカニズム”とは?

 本日は、近代史の興味・関心が深まる話題をご紹介します。

 グローバル化が頻繁に取り沙汰される昨今、世界規模での経済のつながりは、時に「招かれざる客」を呼び込むことになります。

 例えば、新型コロナウイルス感染症の拡大(2020年代)、リーマン・ショックに起因する世界的な金融危機(2008)、そしてやや古いものでは世界恐慌(1929)などがそうです。これら「招かれざる客」は、一方では時代に新たな変革をもたらす原動力でもあります。

 今回は、1929年の世界恐慌に先立つ、「1873年恐慌」を取り上げます。いわば「忘れ去られた経済恐慌」とでも言うべきものですが、果たして150年前の恐慌がもたらした変革とは何だったのでしょうか?

 1873年恐慌の直接の契機は、名前の通り1873年5月にオーストリア・ハンガリー帝国の帝都ウィーンで株式の暴落が始まり、これがその年のうちに欧米を中心に世界中に拡大したものです。

 この恐慌により、工業化を進めていた欧米諸国は、その経済成長を大きく鈍化させる「低成長」を余儀なくされます。まず、そもそもなぜ「1873年恐慌」が起こったのかを解説します。