Photo:PIXTA
“AI王者”エヌビディアが「光」の技術革新にかじを切った。AIを支えるインフラの要、「大規模データセンター」の膨大な電力消費と発熱を抑えるため、従来の電気信号を光信号に置き換えるなど「光技術」への巨額投資を加速。光トランシーバーや光ファイバー、その周辺部材市場に空前の大商機をもたらしている。エレクトロニクスからフォトニクスへ――。この動きはNTTが主導する光電融合「IOWN」構想とも重なる。従来のAIインフラの限界を突破し、次世代の覇権を左右する光技術で高い技術を持つ日本企業に注目が集まっている。(丸三証券アナリスト 松浦勇佑)
最強AI企業エヌビディアが投資した
「光トランシーバー」メーカーとは?
AI半導体メーカーで世界トップの米エヌビディアが、「光」への投資に邁進(まいしん)している。「光」とは、従来の半導体や電子部品でやり取りされていた「電気」による信号の一部を光による信号に置き換えることで、情報伝達の高速化や発熱による電力損失を抑制する技術を指す。
エヌビディアは2026年3月、「光トランシーバー」の大手メーカー、米ルメンタムおよび米コヒレントにそれぞれ20億ドルを出資、さらに、通信半導体大手の米マーベル・テクノロジーと戦略的パートナーシップを締結するとともに、20億ドルを出資すると発表した。
通信技術としての光は、1970年代から研究開発されてきた技術である。その導入目的は高速・大容量・長距離通信の実現であった。近年はAIの普及により、それを裏側で支える高性能な計算・処理インフラとしてAIデータセンターの建設が世界で活発化しており、そこに光技術が導入されている。高速・大容量通信だけでなく、AIを動かすサーバーの膨大な電力消費と、それに伴う発熱を抑えることが、AIデータセンターの重要な課題となっているからだ。
ルメンタムやコヒレントが手掛ける光トランシーバーは、電気信号と光信号を相互に変換(光電変換)する役割を担う重要なデバイスである。「トランスミッター(送信機)」と「レシーバー(受信機)」から構成されている。
あるトランシーバー内で電気信号として処理されたデータは、光トランシーバーにより光信号へ変換(変調)され、光ファイバーを通じて遠隔地のサーバーへ伝送される。受信側では光トランシーバーが光信号を再び電気信号に変換(復調)し、遠隔地のデバイスがデータを処理可能な状態に復元する。光トランシーバーは、トランシーバーと光ファイバーをつなぐ橋渡し役となるデバイスであり、データセンターや通信基地局などにおける通信基盤を支えている。
マーベル・テクノロジーは、通信半導体の開発などを手掛けるファブレス半導体メーカーである。26年2月にはシリコンフォトニクス技術(シリコンウエハー上に“光を扱う回路=フォトニクス回路”を構築する技術)を有する米セレスティアルAIを買収するなど、「光電融合」技術の強化を図っている。エヌビディアとは先進的な光接続やシリコンフォトニクス技術など、次世代AI向けネットワーク開発で連携するとしている。
「光」がデータセンターや通信の基盤に!
NTTグループが主導する「光電融合」に必須
光電融合とは、電気回路と光回路をチップやパッケージ内で近接・一体化し、電気信号と光信号の処理をシームレスに連携させる技術を指す。従来のようにデバイスの外側で光電変換する方式に比べ、データ伝送の高速化、消費電力の低減、配線の高密度化などが実現できることから、次世代のデータセンターや通信インフラの基盤技術として注目されている。
日本ではNTTが光電融合に注力している。同社が主導する光技術を使った次世代の情報通信基盤の構想「IOWN」(アイオン、Innovative Optical and Wireless Network)のロードマップでは、データセンター間の光接続(IOWN 1.0)から、半導体チップ内の回路における光技術の実装(IOWN 4.0)まで、段階的に光電融合技術の適用領域を拡張していくとされている。
NTTは26年3月、世界最大のモバイル関連展示会『MWC Barcelona 2026』に出展。NTTグループ(NTT、NTTドコモ、NTTデータグループ)としては19年以来、7年ぶりとなる。NTTが主導するIOWNの光技術による低消費電力化の取り組みなどを披露した。
光通信技術における中核コンポーネントの一つが、光ファイバーケーブルである。近年の光ファイバーケーブル市場は、生成AIの学習・推論に伴うトラフィック(データ量)の爆発的増加を背景に、構造的な需要拡大局面にある。光ファイバーケーブルは、多芯化(ケーブル内の光ファイバー本数の増加)やマルチコア化(光ファイバーの中心部を通る“コア=光の通り道”の複数化)が進展しており、伝送容量の向上が重要なテーマとなっている。
次ページでは、大規模AIデータセンターやサーバーに欠かせない「光技術」で高い信頼性を誇る日本企業8社について、それぞれ強みとなるポイントとともに、今期と来期の予想営業増益率を、銘柄表にまとめて紹介する。









