ビジネスパーソンに必須!経済&ビジネスの最重要キーワード写真:時事通信フォト

円安は対ドル相場だけで測れるものではない。連載『ビジネスパーソンに必須!経済&ビジネスの最重要キーワード』の今回のキーワードは「実質実効為替レート」。貿易相手国との関係や物価差を反映したこの指標で見ると、円の購買力は1960年代後半に近い水準まで低下している。海外旅行で物価高を感じ、訪日客が日本を割安と感じる背景には、円の「真の実力」の低下がある。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

円の本当の実力と
購買力を映す指標

 今回のキーワードは「実質実効為替レート」です。

 通常、私たちが目にする為替レートは、「1ドル=159円」「1ユーロ=184円」といった、二つの通貨の交換比率です。ニュースで最もよく取り上げられるのは対ドルの円相場であり、その次に多いのが対ユーロの円相場でしょう。

 しかし、世界にはドルやユーロ以外にも多くの通貨があります。円がドルやユーロに対して安くなっていても、別の国の通貨に対しては高くなっているかもしれません。従って、世界の中で円の通貨としての実力、つまり円の購買力を測るには、複数の通貨に対する円の動きを総合的に見る必要があります。

 そのための指標が、実質実効為替レートです。

 ただし、多くの通貨に対する為替レートを単純に平均すればよいわけではありません。日本との貿易額が大きい国・地域の通貨ほど、日本経済に与える影響は大きくなります。そこで実効為替レートでは、輸出額と輸入額を合わせた貿易額の比率を基に、通貨ごとにウエートを付けて平均します。

 このように、貿易相手国との関係の大きさを反映して通貨の強さを測る点が、「実効」という言葉の意味です。単純平均ではなく、貿易額に応じた加重平均にすることで、円の対外的な価値をより実態に近い形で把握できるのです。

 では、「実質」とは何を意味するのでしょうか。

 それは、物価上昇率の差を考慮するということです。例えば、現在の為替レートが1ドル=100円だとします。同じ鉛筆が、米国では2本1ドル、日本では2本100円で買えるとしましょう。この時点では、1ドルと100円の購買力はおおむね釣り合っています。

 ところが1年後、米国で物価が上がり、同じ鉛筆が2本2ドルになったとします。一方、日本では価格が変わらず、2本100円のままだったとします。為替レートが1ドル=100円のままなら、米国では1ドルで鉛筆1本しか買えませんが、日本では100円で2本買えます。

 この場合、名目上の為替レートは変わっていなくても、物価の違いを考慮すれば、円の米国での購買力は相対的に低下しています。米国と日本で鉛筆1本の価格が釣り合うには、1ドル=50円になる必要があります。つまり、物価差を踏まえると、1ドル=50円が1年前の1ドル=100円と同じ実質的な水準だと考えられるわけです。

 このように、複数の通貨に対する円の動きを貿易額で加重し、さらに内外の物価差を調整することで、円の「本当の実力」を測ろうとするのが実質実効為替レートです。

 現在の円の実質実効為替レートは、どのような水準にあるのでしょうか。多くの人が想像する通り、円の実質実効為替レートは大きく低下しています。では、円の実力、すなわち購買力は、いつの時代と同じ程度にまで低下しているのでしょうか。

 次ページでは、その答えを紹介するとともに、円の実質実効為替レートの推移を振り返ります。