アフリカ人留学生が
日本ではなく中国を選んだ理由
新型コロナウイルスが世界を襲った2020年、世界保健機関(WHO)の事務局長で、エチオピア出身のテドロス・アダノム氏が「中国寄り」だと批判された。
「何をいまさら」と思った。社会問題とポテンシャルにあふれるアフリカ大陸で、中国は着々と足場を築き上げてきた。アメリカから敵視されているHUAWEIも、海外進出をアフリカから始めた。製品の品質や競争力を国際的に認められず、先進国を攻めるのが難しかった中国企業なりの戦術でもあった。
アフリカや東南アジアから中国に来ていた国費留学生は、多くがその国のエリートだった。帰国後は母国で大学教員のポストが約束されていた人もいたし、現役の外交官もいた。
ザンビアから来た留学生は、「うちは裕福だったので、両親が3つの留学の選択肢をくれた」と話した。その3つはイギリス、南アフリカ、中国だった。
彼は、「イギリスは物価が高い。南アフリカは治安が悪い。消去法で中国に来た」と言っていたが、欧州、アフリカ、アジアの3択ということが、日本人の私にはピンとこなかった。アメリカ留学が第一志望の日本人が、他の国も検討するならイギリスやカナダ、あるいはオーストラリアだろう。地理的により近く、今後の成長が見こまれ、英語が通じる「インド」と迷ったなんて話は聞いたことがない。
日本人である私は、何人ものアフリカ人留学生から「本当は日本に行きたかったけど、ハードルが高すぎるから中国を選んだ」とも聞いた。
中国のGDPは日本を上回ったが、「研究」「物づくり」などの分野では、中国人ですら「日本や欧米のほうが上」と考えていた(今もまだ、その考えは強く残っているだろう)。品質が高く、ハイテクな日本ブランドは多くの留学生の憧れだった。多国籍の環境で生活して、私は自分の国がグローバルでいかに信頼されているかを知った。