なお、ここでは話をシンプルにするために、AさんもBさんも65歳で働くのをやめ、勤労収入がゼロになると仮定します。

 Aさんは、公的年金を65歳から年間250万円受け取ることにして、年間生活費400万円に対する不足分を資産の引き出しでカバーします。

 生活費400万円に対する不足分は年150万円ですから、100歳までに必要な総額は「150万円×35年=5250万円」となります。金利0%の預金なら、65歳時点で5250万円の資産が必要になるわけです。

 これに対してBさんは、公的年金受給を70歳まで繰り下げることで年金の受給額を42%アップさせて、年間355万円とします。この場合、65歳から70歳までの5年間は、生活費の全額を資産の引き出しでカバーすることになります。

「400万円×5年=2000万円」が必要な計算です。

 70歳以降は生活費400万円に対して年金を355万円受け取れますから、不足する金額は年間わずか45万円になります。100歳までに必要な金額は「45万円×30年=1350万円」となります。65~100歳の合計額は、「2000万円+1350万円=3350万円」です。

 このように計算してみると、公的年金受給を繰り下げるほうが、必要な資産がかなり少なくて済み、資産寿命の延伸に効果があることがわかります。