私は、年金が「リスクへの備え」であることを見失って損得にこだわり、「82歳まで生きるかどうか」を考えて対処法を決めようとするのはおかしいと思います。
「82歳まで生きないかもしれない」と予測し、その予測に基づいて「損するのは嫌だから繰り下げないでおこう」と判断するのは、果たして適切なのでしょうか?
82歳どころか90歳、100歳まで生きるリスクを考え、「そこまで長生きしても問題ないかどうか」を考えて判断すべきなのではないでしょうか。
「82歳までには死ぬだろう」という予測が外れたときに意味を持つからこそ「保険」なのであり、予測が外れたとしても自分の人生の最晩年で致命傷にならないようにするために、私たちは計画を立てるのです。
働きすぎると年金を減らされる
「在職老齢年金制度」に注意
次に、勤労収入と年金収入のバランスについて注意点を押さえておきましょう。
勤労収入をなるべく多く、なるべく長く得られるようにすることは非常に大切ですが、年金を受け取ることと勤労収入を受け取ることのバランスには注意が必要です。
これは、一定以上の勤労収入がある人は受け取れる年金が減額される「在職老齢年金」という制度があるからです。
2024年4月現在では、老齢厚生年金と給与収入(総報酬月額相当額=毎月の給与+1年間の賞与の12分の1)の合計額が月に50万円を超えると、その超過分の半額が年金支給額から差し引かれることになっています。
たとえば、月額15万円の老齢厚生年金を受け取りながら、毎月25万円の給与と年1回120万円のボーナスを受け取っているとします。この場合は老齢厚生年金と給与収入の月額合計額が50万円なので、問題ありません。
しかし給与が25万円から30万円に引き上げられたとすると、月額合計額が55万円になり、上限の50万円を上回った5万円の半分、2.5万円が年金支給額15万円から差し引かれることになります。年金の年間受給額は、「15万円×12カ月=180万円」から「12.5万円×12カ月=150万円」に減ってしまいます。
年金受給以前でも働きすぎると
もらえる年金が減っていく
年金受給開始年齢を繰り下げる際にも、この点は注意が必要です。