
自ら会社を起こして事業を展開する「起業家」たちは、安定収入を手放す代わりに「自由」と「可能性」を手に入れる選択をした人々。新しい生き方として起業したいと思ったとき、どんな第一歩を踏み出せばいいのか。「起業のプロ」として6万人の起業したい会社員と向き合ってきた新井 一氏が、起業の本質について解説する。※本稿は、新井 一著『起業 神100則』(総合法令出版)より一部を抜粋・編集してお送りする。
起業とは安定した収入が
保証されない生き方
まずお伝えしたいのは、「起業とは一体何なのか」ということからです。
「収入」というものさしで見てみると、その実態がより明確になるかもしれません。
2024年現在、総務省の調べによると日本には1億2400万2000人が住んでいます。国税庁のデータによると、そのうち約4割の5077万6000人が給料を得て仕事をしています。そして、3割超の約4000万人が年金で生活しています。
つまり、日本の人口の約7割が何らかの形で定期的な収入を得て暮らしているのです。ここから分かるのは、ほとんどの人が会社に勤めたり、パートやアルバイトをしたり、国から年金をもらったりして、毎月決まったお金が振り込まれるのを待っているということです。この状況はアメリカやヨーロッパでも大きくは変わりません。
同じように約4~5割の人が給与収入に頼り、2~3割の人が年金などの公的資金で生活しているのです。いわば、定期的な収入を得て暮らすことは人間にとってのスタンダードな生き方なのかもしれません。
ところが、起業の世界に一歩足を踏み入れるとその景色は一変します。当然、定期的な収入など保証されていません。たとえ法人化して役員報酬を設定したとしても、毎月同じ売上や利益が確保できるわけではありません。この世界に飛び込んだ人に最初に待ち受けている試練は、「安定した収入」とお別れすることと言ってもいいでしょう。
では、これまで起業してきた人たちは一体どのようにしてお金を生み出してきたのかというと、自分自身で「事業」を立ち上げて、商品やサービスを提供することで収入を得ているのです。