藤井隆氏と濱田マリ氏に共通する、「聞き上手」になるためのシンプルな方法写真はイメージです Photo:PIXTA

「生き方や感情は顔つきに現れる」という楠木新さん。著述家として多くの人を取材し、さまざまな「顔」に接してきた経験から、いつしか「顔の研究」がライフワークになったと言います。『豊かな人生を送る「いい顔」の作り方』第10回は、コミュニケーションにおける機能的な「顔」の使い方について、持論を展開していきます。独自の視点から導き出した、聞き上手になる方法とは?

「顔」がコミュニケーションで果たす役割

 私たちの「顔」は、さまざまな機能を備えています。その最たるものは、日常のコミュニケーションツールでしょう。

 単に、発声器官である口や喉、相手の言葉を聞くための耳など、実用的なパーツを実装していることはもちろんですが、ここで私が述べたいのは、“表情”がコミュニケーションにおいて果たす役割と効果についてです。

 他人とコミュニケーションを図る際、実は「顔」は円滑な会話を行うために非常に大切な役割を担っています。私がそれを改めて実感したのは、数年前に出演した、NHKの『助けて!きわめびと』という番組でのことでした。

 この番組では毎回、何らかのジャンルの専門家が登場してレクチャーする構成で、私は「定年準備のきわめびと」という位置づけでの出演でした。私としても、定年前後の生き方や働き方について自らの見解を披露できる貴重な機会です。

 番組のMCを務めていたのは藤井隆さんと濱田マリさんのお二人。ただでさえテレビに慣れていない私は、名のあるタレントを前にした生番組だったのでかなり緊張していました。

 しかし、いざ番組がスタートすると、そうした緊張が嘘のように霧散します。この日のゲストは私だけだったため、発言の機会は多かったのですが、むしろ普段よりスムーズに話せていることを感じました。

 番組の途中で、私のパフォーマンスを支えていたのは、MCである二人の表情を伴ったリアクションであることに気づきました。私が発言するたびに、「へえ、素晴らしい!」とか「なるほど、そうなんですねえ」などと、オーバーな反応が返ってくるのです。