「江戸時代から、お疲れ様です、の挨拶は使われているそうです。また有給休暇を取る際にも「お休みをいただきます」とか、「休んで申し訳ありません」と言う人が多いですよね?その背景には『一生懸命働くことこそ美徳』という労働意識があると思います。しかし、その価値観によって疲弊しているのなら、やはり働き方、休み方を見直していくべきでしょう」
久保氏は、わが国の労働者の休み方の改善のために、RestとAbilityを合わせた「Restability/レスタビリティ(休む力)」という概念を提唱し、「休む力を高めるためには?」という視点で研究を行っている。
深夜に催促、休日に仕事の指示…
「無言の圧力」をかけられていないか
久保氏は次に、こんな問いを投げかける。
「次のようなメールが深夜、あるいは休日に上司から届いたとき、どう思いますか?」
ケース1「○○社へのプレゼン資料を至急、仕上げて送ってください」
ケース2(金曜日の22時のメール)「○○の件、来週月曜の朝までにお願いします」
ケース3「○○の件、どうなっていますか?」
「どれも嫌な気持ちになると思いますが、ケース1、2はもちろんのこと、実は最も質が悪いのは、ケース3のメールではないでしょうか。明確な指示をしていなくても、業務時間外に仕事をしろという無言の圧力をかけているからです」
悪気なく婉曲に表現したようにメールの送り手は思っているかもしれないが、「仕事のために頑張ることは当たり前」という意識の強さゆえに、知らず知らずのうちにこのような連絡で相手の「休む時間」を奪っていることにも気づきたい。
スマホやパソコンといった通信手段の普及とともに、物理的には職場から離れても、移動中や夜間、休日の自宅でもメールチェックをする人は多いかもしれない。このために心理的に仕事から離れることができず、「目に見えない労働時間」が増えている。
しかし、夜寝る前になってもあれこれ翌日の仕事のことを考えると深い睡眠の量が減り、睡眠の質が悪化するというスウェーデンの研究報告がある。
【翌日の不安が増すほど睡眠の質が悪くなる】