10月に秋田県で3度にわたって出会ったそれぞれ3個体・10個体・16個体は、2例を除けば強い警戒心を持っており、私の気配に気づくと同時に逃げました。(編集部注:2023年10月から、著者は秋田県の現地へ出向き複数のクマの出現を観察している)

 例外的だった2例はといえば、29日に子連れのメスが100メートルほど離れたところで重機による畦の補修が始まってもイネを食べ続けていた例と、31日に、やはり子連れのメスに対して住民がロケット花火で追い払おうとしても、少し移動しただけで、そのままソバを食べ続けた例です。

 ロケット花火も重機もその場所で何度か使われていた可能性が高く、クマのほうがすでに花火や重機が音しか出さず、危害を加えてこないことを学習していた可能性が高いと受け止めました。

 11月1日には狩猟が解禁になりました。11月8日に一帯を走った際にはツキノワグマの姿は消えており、10月には重機の音でも親子が逃げなかった水田に行くと、前足に生々しい銃創を負った仔グマ1個体だけが、稲刈りの終わったなかで落ち穂を拾っていました。

 本来であれば越冬を控えて山に移動してゆく時期です。私が多くの個体を見たのは10月31日までで、その翌日から狩猟が始まったことになります。

 それまでロケット花火などで脅すだけで、危害を加えてこなかった人間が、ある日を境に銃を使用するようになったことで、秋の狩猟期間には、日中にも姿を隠さずに活動していた子連れのメスが捕獲されやすかったのではないかと思われました。

クマが出続ける一因は
人間による狩猟や駆除

 12月になっても、あるいは2024年1月に入っても、まだクマが出たという報道が続き、異常事態という言葉が繰り返されました。

 その多くは体長が50センチメートル程度の仔グマで、報道を見るたびに書きとめておいたのですが、具体的には以下のような例がありました。

・山形県飯豊町でカキに上っていた例(2023年12月25日)
・岩手県北上市で商業施設に仔グマが出現した例(2024年1月9日)
・秋田県鹿角市で雪のなかでカキを食べていた例(2024年1月8日)
・山形県尾花沢市でカキに上っていた例(2024年1月20日)