木村氏は、エスピノーサ社長就任を決定したことについて「内田社長は在任5年が過ぎ、経営体制刷新が必要と判断した。エスピノーサ氏は次期社長にふさわしい人物として候補者に選定された。日産の置かれている状況から厳しい船出となるが期待したい」と冒頭に述べた。
一方、内田社長は「私自身、1日も早く日産の方向性を明確にし、業績を回復するための取り組みを進めていたが、社員からも経営責任を問う声が出ている。急速に悪化したこの1年間にあって、忸怩(じくじ)たる思いだ」と無念の胸の内を披瀝(ひれき)した。
エスピノーサ氏は「日産はこんなものではないと心から信じている。日産に安定性と成長を取り戻していきたい」と、決意を表明した。記者からホンダとの再協議の可能性を問われた際には、「臆測の内容についてはコメントできない。まずはチームと共に将来に向けた取り組みを進めたい」と明言を避けた。
それまでの情勢を踏まえ内田社長退任決定が濃厚となったことで、筆者は12日の午前中にあるメディアから「社長交代で日産ブランドの再生はどうなるか」について取材された。
「残念ながら、内田日産の5年間の通信簿は、結果的に“落第”。ホンダとの経営統合もまとめられず事実上の解任はやむを得ない」
「ただし、ゴーン元会長の逮捕から後継の西川廣人元社長辞任といったゴタゴタの中で社長に指名された内田体制であったし、スタート直後から元副COOの関潤氏が離職しトロイカ経営が崩れるなど、日産再生・ブランド回復へ社内が一丸となれなかったことは大きい。23年の株主総会では、内田体制の右腕だったグプタCOOの突然の退任に株主から疑問の声も上がった。結局、ゴーン時代末期のツケ(無理なグローバル拡大路線)を解消できなかったのだ」とコメントした。