トヨタは今年「監査役会設置会社」から「監査委員会等設置会社」に移行することを決めている。これは、監査等委員である取締役をそれ以外の取締役と区別して選任して「監査等委員会」を設置するものだ。監査役との違いは、監査等委員が取締役として議決権を持つということ。これにより当事者として活発な議論が期待できる。

 加えて、トヨタが期待しているのが意思決定の迅速化だ。監査等委員会設置会社では、取締役会から執行へ重要な業務執行の決定が任せられるようになる。今回、取締役10人、監査役6人から、新たに取締役10人に一本化され、そのうち5人は社外取締役が占めるため、従来以上に経営の透明性や公平性が高まるとされる。

 トヨタは、これまでも経営体制の変更を繰り返してきた。かつては、豊田章男社長時代に、「私を含む7人の侍でトヨタの経営をリードする」と6人の副社長体制にしたり、常務役員まで多数の役員構成だったのを一気に削減し単純化したりなど、さまざまな改革を行ってきた。また、豊田章男氏は23年に佐藤恒治社長に禅譲し、次世代への継承を進めている。

 同じくスズキも、昨年末に「カリスマ経営者」だった鈴木修氏の逝去により、長男の鈴木俊宏社長体制に完全移行している。業績面で安定し、成長路線を描いている中で、4月から役員陣の若返り刷新を行う。

 こうしたトヨタ、スズキのオーナー企業と比べると、日産の動きは対照的だ。日産には、一段と踏み込んだ経営体制の刷新が求められよう。

 いずれにしても、46歳のエスピノーサ日産体制が4月の新年度からスタートするとはいえ、今期赤字転落見通しとなっている日産で果たして自力再生が可能なのかは不透明だ。25年3月期の中間配当は無配となり、株価低迷も続いている。

 エスピノーサ氏は、子会社などでの社長経験もなく、経営手腕は全くの未知数だ。そもそも、日産凋落の原因は「商品力の低下と欠如」という指摘もあり、新車商品企画の担当者であるCPLOとして責任があるのではとの声も聞こえる。

 低迷する株価を受けて、日産の“買い手”候補の名前も多数挙がる。自力再生を進めるのか、あるいはホンダとの再協議やほかのテック企業などとの提携を進めて、生き残りを図るのか。

 エスピノーサ新体制は厳しい船出となるが、少なくとも経営執行のスピードを上げ、改革を断行することが求められよう。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)