ケースその6
会議の場で意見がぶつかってなかなか結論が出そうにないときに
「ガッチャンコしてみたらどうかな」
これも「おじさんビジネス用語」のひとつ。「いっしょにする」「合体させる」といった意味です。本来は「Aの資料とBの資料をガッチャンコしておいて」「今度、A社とB社がガッチャンコするらしい」といった使い方が一般的。じつは明確に合体できないものを合体させる場面でこそ、この言葉は真価を発揮すると言えるでしょう。
会議の場で二つの意見がぶつかって、なかなか結論が出そうにないとします。どちらの意見ももっともで、主張している当人たちもだんだんムキになってきました。そんなときは「ガッチャンコする」という昭和フレーズの出番。それぞれの顔を立てつつ、いったん頭を冷やして、両方の意見のいいところを拾い上げようという機運が高まります。
結果的に、ぜんぜんガッチャンコしていない話になってもかまいません。「ガッチャンコした」という経緯があれば、当事者は自分の意見が十分に尊重された気になれます。
ケースその7
部下や後輩が作成した企画書が期待以上の完成度だったときに
「恐れ入谷の鬼子母神だね」
仕事ぶりをホメるときにも、昭和フレーズは大いに活躍してくれます。部下や後輩が作成した企画書がよくできていたときや、仕事の速さに感心したときには、「恐れ入谷の鬼子母神だね」という昭和フレーズで、驚きと称賛の気持ちを伝えましょう。
フツーに「よくできてるね」「すごいじゃない」と言うよりも、心が激しく揺さぶられた様を伝えることができます。しかも、珍しい響きのフレーズなので、言う側の知性や教養が感じられて、より説得力のあるホメ方になってくれる……かも。少なくとも、これをサラッと言えたら、大人としてひと皮むけた気になれるに違いありません。
「驚き桃の木山椒の木だね」も、ほぼ同じ用途で使えます。仕事を頼む場面で使いたいのが「キミならお茶の子さいさいだと思うけど」というフレーズ。日頃から能力を高く評価している気持ちを伝えることで、張り切って取り掛かってもらうことができます。
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ここで紹介した「昭和フレーズ」は、ほんの一例です。たくさん覚えて、どんどん繰り出しましょう。昭和に生まれ育った昭和人間だけでなく、若者が使うのもまたオツなもの。上の世代をニヤリとさせられるのはもちろん、そこはかとなく貫録が感じられて、同世代からも一目置かれるに違いありません。
ただし、ケース5でも申し上げたように、狙いが裏目に出て呆れられたり不真面目だとムッとされたりするリスクはあります。そんなスリルもまた、昭和フレーズの醍醐味。あなたが発した昭和フレーズは、閉塞した令和のビジネスシーンに活力を与えるはずです。世のため人のためという意味も込めて、リスクを恐れずどんどん使いましょう。