石破茂が「死の商人になるのか!」と叫ぶ武器輸出反対派に言いたいこと写真提供:新潮社

日本の武器輸出や他国との兵器の共同開発については、根強い反対論がある。「人を殺すものを売るのか?」などという意見もあるが、それは物事の一面に過ぎない。石破氏がよくされるという質問に答えていく。本稿は、石破茂『私はこう考える』(新潮新書)の一部を抜粋・編集したものです。

歴史や現状を冷静に見ると
単純な話ではない武器輸出

「武力によって平和を維持するという考え方そのものが古いと思います。もっと平和的な外交、ハードパワーだけではないソフトパワーによる外交、人と人との交流などを進めていくべきであって、軍事力で安全を守るという考え方は時代遅れではないでしょうか?」

 ソフトパワーというのは、軍事力以外の力、価値観の共有や人的交流や文化交流などのことを指します。文化やスポーツなどで普段から交流を深めておけば、友好関係を築きやすいでしょうし、不要な対立を招く可能性も低くなるでしょう。それはとても大切なことです。

 しかし、そもそもハードパワーとソフトパワーは二者択一すべきものではありません。ソフトパワーなきハードパワーは単なる暴力ですし、またハードパワーなきソフトパワーは単なる幻想、理念です。

 だからこそ世界で軍隊が無い国は、まずありません。コスタリカには軍隊がない、とされていますが、軍隊と称する組織がないだけで、いざという時には、普段は警察をやっている組織が軍隊を兼ねることになっています。警察が一人二役を務めるわけです。

 もちろん、常日頃の外交力は強化しなければなりません。それは今後も努力し続けます。しかし、軍事力あっての外交力という面はたしかにあるのです。

 国の外交力は、さまざまな要素から構成されています。そこには文化的交流もあるし、ODAなどの経済援助もあるし、集団的自衛権を含む安全保障の力もあるし、武器輸出も重要な要素です。戦後、日本は経済援助を曲がりなりにもやってきましたが、台所事情からその力が最近やや落ちている感は否めません。

 そこに加えて、集団的自衛権を行使可能とせず、また武器輸出という面でも他国と連携をしていないというのが日本の現状です。

 武器輸出、もしくは他国との武器の共同開発というとアレルギー反応を示す人もいます。「死の商人になるのか!」というわけです。

 しかし、歴史や現状を冷静に見ると、そう単純な話ではないことがわかるはずです。この点について、少し説明をしておきましょう。