また、国連の要請などによる国際的な連携の下に多くの国が参加するオペレーションを展開するには、できるだけ武器やシステムが共通である方が望ましいことも当然です。
故障が発生したり、一時的に不足が生じたようなときに、簡単に修理できたり、部品を融通しあうことのメリットは計り知れません(これをインターオペラビリティと言います)。このような国際的な流れの中、武器輸出についての考え方を徐々に見直すことが必要となります。
日本が武器の共同研究や開発にかかわっていくことに懸念を持つ人がいるのは事実です。しかし、そもそも日本が武器輸出をしていないことが、「日本は世界の平和に貢献している」といった国際世論につながっているわけではありません。「日本は武器を輸出していないんだってさ。立派だね」などとは誰も言ってくれません。なぜならどの国も国産にせよ輸入にせよ、武器を持っています。
自分たちがどこかから買っている商品なのに、「売っている奴は悪い奴だ」などと言うはずがないのです。多くの国が同じタイプの武器を使用することは数多くの国が「一蓮托生」の関係になることであり、決して安全保障上悪いことではありません。どこかが突出した秘密兵器を開発するといったリスクも低減できるでしょう。
また、一対一の戦争を好んでしかけるような国は、少なくとも先進国の中から現れるとは当面、考えづらいでしょう。

石破茂 著
世界の平和と安全を脅かすような存在に対して、皆で協力して行動する、という集団安全保障の考えに基づいた行動のほうが今後増えていくものと考えられます。そうした場合にも、ある程度同じタイプの武器を使うほうが、共に行動しやすいという実利的な面も考えられます。
武器輸出はハードパワーにあたるのか、ソフトパワーにあたるのか。
確かに軍事に関係はしていますが、ある面では技術やビジネスの交流でもあります。簡単にどちらかだと決め付けられることではありません。
現実の外交を考えた場合に、ハードパワーかソフトパワーかという二者択一に現実味はありませんし、またそもそもそう簡単に二分できるものでもないことはおわかりいただけるかと思います。