トランプはペリーか、マッカーサーか?歴史の失敗が教える「トランプ攻略法」第47代アメリカ合衆国大統領 ドナルド・トランプ氏 Photo:JIJI

歴史には数々の「失敗」がある。この真実を読み解くことで、時を経て繰り返される現代の失敗に向き合う連載『歴史失敗学』。第7回は、幕末の政府が米国と結んだ二つの条約の失敗を改めて検証し、現代のトランプ外交と重ね合わせてみる。(作家・歴史研究家 瀧澤 中)

黒船の星条旗が現代の世界に翻る?

 1945(昭和20)年9月2日、東京湾に停泊した巨大な戦艦ミズーリ。ここで第二次世界大戦における日本の降伏文書調印式が行なわれた

 記録映像には、落胆と緊張がにじむ日本側の代表団とは対照的な、元帥ダグラス・マッカーサーの自信たっぷりな様子が映し出されている。

 このときミズーリ甲板には、二つの星条旗が飾られた。一つは、日本による真珠湾奇襲時にホワイトハウスに掲げられていたもの。もう一つはなんと、幕末にマシュー・ペリーが黒船来航時に掲げていたものである。ついでに言えば戦艦ミズーリが停泊した場所は、横浜・小柴沖。ペリーの黒船が碇泊したその場所であった。

 マッカーサー指示による一連の措置は、「アメリカが再び、愚かで遅れた日本を屈服させる」という強い“上から目線”を感じるのは筆者だけであろうか。

 アメリカ大統領ドナルド・トランプの言動は、どこかマッカーサーやペリーを思い出させる傲慢さがある。幕末にペリーの掲げた星条旗を、今またアメリカが世界に向けて振り回していると考えると、幕末当時の日本の対応には、現代に生かせるヒントが隠されているのではなかろうか。 

 幕末の頃、なぜアメリカは日本に開国を求めたのか。これははっきりしている。アメリカが、日本を利用したかったからである。

 1800年代に入ってアメリカは人口が激増した。ニューヨークでは1800年代初頭に6万人だった人口が、同年代半ばには50万人を超えた。人口は工業化と連動してすさまじい勢いで増加し、結果、石炭や鯨油が大量に必要になった。

 そこで捕鯨のため太平洋に進出。捕鯨船の補給基地として鎖国中の日本が検討されたのである。自国の経済を発展させるためなら他国の決まり事などお構いなしであった。

 アメリカだけを責めるつもりはない。欧州の大国も似たり寄ったりのことをしてきた。大国が腕力にモノを言わせて他国を屈服せしめることは今日までずっと続いてきたということである。それを「ダメだ」「嫌だ」と言ったところで問題は解決しない。