東大生の母の意外な「口グセ」気配り力が異次元すぎて尊敬しかない『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生(文科二類)の土田淳真が教育と受験の今を読み解く連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」。第37回は、受験期における「家族のサポート」について考える。

受験日の「お弁当」から逆算して…

 東大合格請負人・桜木建二は、自身のクラスに通う2人の生徒の保護者に「東大合格必勝法 家庭の10カ条」を見せる。「家事をさせること」「同じ時間に風呂に入らせること」など一見受験とは関係なさそうに思える内容に2人の保護者は戸惑うが、桜木は「合格は日常生活の延長線上」と強調する。

 受験には、過不足のない家庭のサポートが欠かせない。母親に、私の受験期に気をつけていたことについて聞いてみた。

「家庭の10カ条」では、冒頭から「一緒に朝ご飯を食べること」とあるように、食事は極めて大切だ。私の母は、受験本番当日にどのようなお弁当を作るかを先に決め、そこから逆算して直前期の献立を考えていた。さらに、その練習のために東大型の模試を活用していたという。

 これは余談だが、試験本番のご飯といえば、けらえいこさんの漫画「あたしンち」で登場した「ゴーヤと角煮で『ゴーかく』ってのはどう?」という創作レシピのシーンを思い出す。とはいえ、ゴーヤと角煮は食べ合わせが悪いような気がしなくもない。ちなみに、本番のお弁当は私がリクエストした豚の生姜焼きだった。

 受験シーズンは真冬だ。何の因果かはわからないが共通テスト当日は毎年、雪が降るような気がする。そんな時に電車が止まっては大変だ。常に会場近くの宿を押さえておくことが肝心だと母は言う。悪天候や電車の遅延といった場合だけでなく、急に体調不良になった時に移動距離を少しでも短くすることにも役立つ。

 勉強に関しては、両親どちらからも口出しをされた記憶はない。1回だけ、塾に提出する答案のスキャンを母が手伝ってくれたことがあった。先日その真意を聞いてみると、「深夜0時を回りそうだったから」という答えが返ってきた。私の就寝時間を気にしての気遣いだったのだ。

緊張感を高めた「受験カレンダー」

漫画ドラゴン桜2 5巻P115『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

 私は母校の保護者会でお話をさせていただく機会があるのだが、その時に必ずするのが、受験のスケジュールを記したカレンダーの話だ。

 私の場合は、縦軸に1月1日から3月31日までの日付、横軸に受験大学名を並べていく形式のものをエクセルで作って印刷した。A3大のサイズだったかと思う。それぞれのマスに、「出願締切」「受験本番」「入学金振り込み期限」などと書く。

 第一志望校の受験日や合格発表日は覚えているだろうが、第三志望校の入学金振り込み期限日などはさすがに覚えていない。そんな時にいちいち調べるのは時間がもったいない。何より、一目で見えるようにしておくと緊張感が高まる。ネットにテンプレートを記載したサイトもあるから、ぜひ活用していただきたい。

 最も大事なのは、これらを家族で共有することだ。「家庭の10カ条」にも「この10カ条を父親と共有すること」とあるように、家族全員でサポート体制を築くことが不可欠である。これはなにも、精神論を言っているのではない。

「私がいつ倒れてもいいように」が母の口癖だった。なにも重い病気を抱えているわけではない。例えば入学案内書や願書の場所を母親しか管理していないとなると、万が一の時に保管場所がわからなくなるかもしれない。お弁当のルーティーンが崩れたら、体調を崩すかもしれない。そんな気配りからの発言だ。

 準備不足で受験が失敗したら悔やんでも悔やみきれない。あえて嫌みな言い方をすれば、親の役割とは「学力以外の失敗要因を作らないこと」であると思う。陰ながら受験を支えてくれた親には感謝しかない。

漫画ドラゴン桜2 5巻P116『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク
漫画ドラゴン桜2 5巻P117『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク