「みてね」が見出した「痛みを伴うレベルの課題/欲求」
なぜ「みてね」は次なる収益の柱となるほどの成功をおさめることができたのでしょうか。「みてね」の成功要因を新規事業創出の観点から分析すると、いくつかのポイントが挙げられますが、最大の要因は、お金の払い手である利用者が本当に必要としているものを見極め、それを実現したことにあると筆者は考えます。
ひとつは、利用者にとっての「痛みを伴うレベルの課題/欲求」を見いだせている点です。
新規事業を考えるうえで重要なのは、「Pains(ペイン)」と「Gains(ゲイン)」を正しく見極めることです。「ペイン」は、利用者が抱える痛みを伴う悩みやストレスのことで、それを解消できるサービスにはお金や時間を惜しまず投じられます。一方、「ゲイン」は「これがあれば便利」「あったら嬉しいな」といったレベルのものです。「あれば便利」レベルのゲインでは人を動かす力が弱いため、ペイン型の事業開発のほうが成功の再現性が高く、少ない予算でも立ち上げやすいと言われています。
「みてね」は、子どもが生まれたことをきっかけに写真や動画が劇的に増え、その管理に困っている親世代の「痛みを伴うレベルの課題/欲求」を的確に捉え、それを解消するサービスとして設計されています。
・写真を撮る頻度と量が増えて、定期的に写真をオンラインストレージにアップする作業がストレス
・日々の成長、「今」の姿を共有したいが、家族間での写真の共有の量と頻度が増えて大変
・写真を共有する際、どの写真がすでに共有済みで、どの写真が未送信かがわからなくなる
こうした親世代の「ペイン」を踏まえて、使いやすさを追求したユーザーインターフェースで設計された「みてね」は、子どもの成長をストレスなくまるごと残せるアプリとして多くの利用者に支持され、お金を払ってでも使いたいサービスとなったのです。
さらに、ミクシィが見出していたものは、この「ペイン」だけではありません。それ以上に重要なのは、まだ誰も気づいていない「人を動かす隠れたホンネ」を見つけ出したことです。