![大谷翔平](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/9/5/650/img_951aa42443953c467056733d18ca9126519186.jpg)
2年連続の本塁打王、自身初の打点王、さらには史上初となる「50-50」の偉業など、大リーグで歴史的な記録を打ち立てた大谷翔平選手。しかし彼自身は数値目標を口にすることはなく、数字よりもチームへの貢献を重視しています。そして、その姿勢は『マネー・ボール』に出てくる、一般にはあまり知られていない「ある数字」と深く結びついていました。100年の歴史を持つ野球界で長らく見過ごされてきた、その指標とは?(電通 シニア・マーケティング・ディレクター 佐藤真木)
大記録を達成した大谷翔平選手は、なぜ数値目標を口にしない?
大谷翔平選手が歴史的な大活躍をした2024年。前年に続き2年連続の本塁打王、自身初の打点王、さらには史上初となる「50-50」の偉業など、数々の大記録を達成。しかし筆者が知る限り、大谷選手本人が数字に対する目標を口にすることは一度もありませんでした。
大谷選手のプレーや発言から見えてくるのは、大記録の達成よりも「いかに勝利や得点に貢献するか」を重視する姿勢です。その貢献度を示す重要な指標が「OPS」です。OPSが具体的にどのようなデータなのかは後述しますが、このOPSこそが、現代のメジャーリーグの戦略や選手の評価基準を根本から変えた、画期的なデータなのです。
興味深いことに、OPSを構成するデータは、野球が始まった約100年以上前から存在していたにもかかわらず、最近までその価値に気付かれることはありませんでした。膨大なデータの中から、飛び抜けた発想や、新たな価値を発見できるようになるにはどうすればよいのでしょうか。その大きなヒントとなるのが、データからインサイトを見つける「インサイト思考」です。
データから「インサイト」を発見するには?
データはどんなものでも、きちんと解析されていれば、現実世界の一端を見せてくれるものです。しかし、そこから「インサイト」を発見し、有用な「新たな視点」を見出して「価値」を提供し、イノベーションを起こすのは、容易な作業ではありません。
どのようにしたら、データから「インサイト」を発見し、さらにイノベーションへとつなげることができるのでしょうか?
『マネー・ボール』(マイケル・ルイス著 中山宥訳 早川書房)という、メジャーリーグで実際にあった話を題材として映画化された本に、データから新たな視点や価値、すなわち「インサイト」を見出した非常に興味深い例があります。