「60歳以降の仕事人生にも、ガイドが必要だ」――そう語るのは、リクルートワークス研究所の坂本貴志さん。高齢期の就労・賃金を専門とする坂本さんが、65歳以上・640万人のデータを分析し、まとめた書籍が『月10万円稼いで豊かに暮らす 定年後の仕事図鑑』です。
定年退職=引退だった時代は終わり、いまや「定年後の仕事探し」を自分自身で行う時代がやってきました。本書では、実際に働いている人のデータを参照しながら、19カテゴリ、100種類の仕事を紹介。現役時代とは全く違う仕事選びのコツについても解説しています。
※この連載では、本書より一部を抜粋・編集して掲載します。

定年後は「ストック(貯蓄)」より「フロー(収入)」を意識せよ
老後資金のことを語るとき、多くの人が貯蓄(ストック)に注目する。「老後2000万円問題」などはその典型である。
総務省の「家計調査」によると、60代・70代の純貯蓄額(貯蓄から負債を引いた額)の平均値は約2000万円。平均値は極端に高い層に引っ張られるため、より多くの人に当てはまる中央値をみると約1500万円となっている。
しかし、様々なデータを分析すると、実は60代と70代で純貯蓄額はあまり変わらない様子も見て取れる。このことから、多くの世帯は貯金をあまり取り崩すことなしに生活を送っていると思われる。
人生100年時代と言われて久しい中、日本人男性の平均寿命は81.41歳、日本人女性の平均寿命は87.09歳まで延伸している。60歳まで生きた人に限れば寿命の期待値はさらに高まり、男性は83.68歳まで、女性は88.91歳まで生きることが予想される。
自分が何歳まで生きるかは不確実性が高く、老後に備えお金を貯め込んではきたものの、怖くて使えないという人も多いと考えられる。
残された寿命が長く、しかもいつまでかわからない……この状況で、お金のリスクを最小化するためにはどうすべきか。
その観点で言えば、「ストック=貯蓄」もさることながら「フロー=定期的に入ってくる収入」を増やすことが最も重要だ。
毎月定期的に入ってくる収入さえしっかりあれば、日々の生活には困らないし、多額の貯金は必ずしも必要ない。
本書で詳しく述べているが、高齢期は現役世代と比べて大きく支出が減る。フローである程度の収入が見込まれるのであれば、貯金がそれほど多くない水準であっても、現在の高齢世帯が送っている平均的な暮らしを送れると考えられる。
もちろん目指す生活水準によっても異なるが、もし貯金が数百万円ほどであっても、健康状態が悪化するまでの期間、稼ぎ続けることができれば問題ないだろう。そこで必要なのが、本書で紹介する「月10万円稼ぐ」仕事なのだ。