税務署も悔しがる!? 罰金を合法的に減らす方法
2023年10月からインボイス制度が始まりました。「増税ではないか?」「経理の手間が増え、負担が増大する」など、さまざまな意見が出ています。そのインボイス制度の影響を強く受けるのが「ひとり社長」です。しかし、業種・業態・売上規模によっては、「インボイスに登録しないほうがいい」と提案できるケースもあり、戦略的な選択が求められる制度ともいえるのです。
本連載は、経費精算から決算・申告まで、ひとり社長の経理の基本を学ぶものです。著者は、税理士の井ノ上陽一氏。インボイス制度、電子帳簿保存法に完全対応の『【インボイス対応版】ひとり社長の経理の基本』の著者でもあります。「ひとり社長なら、経理はこれだけでいい!」とポイントをおさえた1冊になっています。

税務署も悔しがる!? 罰金を合法的に減らす方法Photo: Adobe Stock

知らないと絶対損する「すごい法律」とは?

 経理・税金は長らく紙の世界でしたが、電子帳簿保存法は、その紙をデータで保存しようという法律です。

 この法律はちょっとずつ変わってきており、徐々に使いやすくなってきました。その大きな変更が2022年から実施される予定でしたが、「準備が追いつかない!」という声もあり、2024年に延期されたのです。

 電子帳簿保存法の改正にむけて、IT業界はビジネスチャンスとばかり、いろいろと煽ってきています。冷静に対処しましょう。

義務ではなく、任意!

 電子帳簿保存法という法律は義務ではなく、任意です。2023年も2024年以降もこれまで通りでもかまいません。任意でありながら、うまく活用したい部分もあります。

 うまく活用すれば経理を効率化できるのです。いいとこ取りをしていきましょう。

会計ソフトのデータをプリントアウトしなくていい

 従来は、会計ソフトのデータはプリントアウトしてとっておかなければいけませんでした。プリントアウトするのは総勘定元帳です。税務調査では、プリントアウトした総勘定元帳が必須でした。

 電子帳簿保存法では、この総勘定元帳をデータで保存することができます。会計ソフトでその設定をすればいいのです。

 ただ、データの履歴も全部保存されてしまいます。データの改ざんもすべてわかってしまうのです。ただ、恐れることはありません。不正をしなければいいだけです。

罰金を合法的に減らせる!

 優良電子帳簿(優良な電子帳簿)という制度もあります。これは、会計ソフトの設定をしておくと、税務調査のペナルティ(過少申告加算税=税金が少なかったことによる罰金)が10%から5%になるというもの。いざというときのために、やっておいても損はありません。

 10万円の税金を追加で払うことになった場合、その10%は1万円。優良電子帳簿にしていれば、その1万円が10万円×5%の5000円になります。罰金が100万円なら50万円です。優良電子帳簿の要件は次の通りです。

・データの訂正、削除の履歴がわかる
・いつ入力したかがわかる
・データとデータが関連づけられている
・パソコン、ディスプレイ、プリンター、およびこれらの操作マニュアルがある
・データを検索できる(取引日、金額、取引先等)

 一見、大変そうに見えますが、会計ソフトを入れておけばこれらの要件を満たします。その会計ソフトで設定をすればいいだけです。優良電子帳簿のデメリットは特に考えられません。もし優良電子帳簿の要件に不備があった場合は、税務調査の罰金が10%のままになります。設定しておくようにしておきましょう。

(本原稿は『【インボイス対応版】ひとり社長の経理の基本』を一部抜粋・加筆したものです)