「サンディエゴ」は「ごえいてんさ」……「御栄転さ」と読めるので、真ん中に「に」を入れれば「サンディエゴに御栄転さ」(さんでぃえごにごえいてんさ)

 同様に、「ノルウェイで家売るの?」(のるうぇいでいえうるの)とかね。

 このような回文づくりは昔からあって、次のような名作が残されています。

 平安時代には……

 むら草に 草の名はもし備わらば なぞしも花の 咲くに咲くらむ
(むらくさに くさのなはもし そなわらば なぞしもはなの さくにさくらむ)

 鎌倉時代には……

 白浪の 高き音すら 長浜は かならず遠き 潟のみならし
(しらなみの たかきおとすら ながはまは かならずとおき かたのみならし)

 室町時代には……

 長き夜の 遠の睡りの 皆目醒め 波乗り船の 音の良きかな
(ながきよの とおのねむりの みなめざめ なみのりぶねの おとのよきかな)

 などなど、どれも素晴らしい作品です。

「くっだらね~」
回文の楽しさはそこ

 このような高尚さはありませんが、『弘兼憲史の回文塾』に掲載した作品を、ここでいくつか紹介しておきます。

 世の中ね「顔かお金か」なのよ
(よのなかね かおかおかねかなのよ)

 預金いくらで楽隠居?
(よきんいくらで らくいんきょ)

 団塊世代を追い出せ?遺憾だ
(だんかいせだいをおいだせ いかんだ)

 さいなら祭り 騒ぎは去り つまらないさ
(さいならまつり さわぎはさり つまらないさ)

 このライオンおいらの子
(このらいおん おいらのこ)

 私デートで、街まで遠出したわ
(わたしでーとで まちまでとーでしたわ)

 寝ている私に何した?悪い手ね
(ねているわたしになにした わるいてね)

 どうでしょう。

 僕はやっぱり、くだらない作品のほうが性に合っているようです。

 多少、意味はわからなくても「くっだらね~」という作品が好きです。

 たとえば……

 寝つきいい狐
(ねつきいいきつね)

 寝つきの悪い狐なんていね~だろ~!?

 意外な孔雀、悔しくないかい?
(いがいなくじゃく くやしくないかい)

「意外な孔雀」ってどんな孔雀なのでしょう?

 和太鼓叩いたタコいたわ
(わだいこたたいたたこいたわ)

 いね~だろう……タコは和太鼓叩かんだろう……なんてね。

 ぜひ一度、回文づくりに挑戦してください。

まだまだある
気軽な言葉遊び

「弘兼憲史の回文塾」の連載終了後、2009年から『週刊朝日』で、「パパは牛乳屋」という連載を始めました。

 こちらも力作を集めた1冊の本が出ています。

「パプアニューギニア」と「パパは牛乳屋」、文字で書くとまったく違うのに、声に出すと似ていますよね。