カニバリゼーションを恐れずに
価値を生み出して届ける

 自己カニバリゼーション恐怖症を克服するには、「カニバリゼーションは成功の証」という発想の転換が必要です。

 Appleは、iPhoneがiPodを駆逐することを恐れず新たな市場を創出し、持続的成長を実現しました。本来、優れたプロダクトは既存ビジネスを補完し、新市場を開拓するもの。企業が持続的に成長するためには、自己カニバリゼーションを恐れず、むしろ積極的に受け入れる姿勢が求められます。

 自己カニバリゼーション恐怖症克服のために企業が取るべき具体的な戦略は、次の3つにまとめられます。

1. 内部競争を受け入れる文化をつくる

 新規プロダクトが既存事業と競合することを前提に、組織内で健全な競争を促す仕組みを整える。評価制度や報酬体系を見直し、新規事業の成功が社内で正当に評価されるようにする。

2. 新規プロダクトの影響を段階的に管理する

 新規プロダクトが既存事業を一気に駆逐するのではなく、時間をかけて市場に浸透するように段階的な移行戦略を設計する。たとえば、ハイブリッドモデルを採用し、既存事業と新規事業が共存できる期間を設ける。

3. カニバリゼーションを前提に市場を拡張する

 既存事業が食われることを前向きに捉え、それを機に新たな市場を開拓する(Adobeのサブスクリプションモデル移行の例)。

 イノベーションのジレンマを乗り越えるためには、新規プロダクトを別組織で開発し、独立した評価基準を持つことも必要です。例えば、Googleが次世代技術の開発を担うGoogle Xを設立したように、本体とは別の環境で新規プロダクトを育成することが、イノベーションを成功させる鍵となります。