Slack、Zoom、Dropboxなど、多くのSaaS企業に成功をもたらした「プロダクト主導の成長(PLG)」。営業担当者を介さず、プロダクト自体の価値で顧客を引きつけるPLGの本質とは。マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏が、PLG成功への道筋と日本企業がこれをどう活用すべきか、解説する。
プロダクト主導の成長モデル
「PLG」とは何か?
突然ですが、皆さんは、SlackやZoom、あるいはDropboxといったツールをいつ、どのように使い始めたか、覚えていますか? おそらく、自ら積極的に導入したというより、職場で同僚が使っているのを見て便利そうだと思ったり、同僚から薦められたりして、気づけば自分も使うようになっていたという方が多いのではないでしょうか。
こうしたプロダクトに共通しているのは、ユーザー自身が自発的にその価値を実感し、自然と利用が広がる仕組みを採用していること。これは「Product Led Growth(PLG、プロダクト主導の成長)」と呼ばれる事業成長モデルの典型的な特徴です。
従来の営業主導型の手法「Sales Led Growth(SLG、営業主導の成長)」では、営業担当者が企業の意思決定者に直接アプローチし、契約を勝ち取るのが一般的でした。一方でPLGでは、プロダクトそのものが営業担当者の役割を果たします。「プロダクトがプロダクトを売る」のです。
PLGでは、ユーザー自身がプロダクトを見つけ、自ら試し、導入までを主体的に進めるスタイルを取ります。これは、もともとBtoC(消費者向け)プロダクトの世界で一般的なスタイルです。仕事で使うプロダクトの選択も、BtoCと同じようなかたちでエンドユーザーが自ら行うケースが増えてきたのです。