マゴーワンによれば、それだけではない。

「研究が示すように、猫のオレンジ色を発現させる変異は、色素細胞の内部だけで特定の遺伝子のスイッチを入れる。その他の細胞型は影響を受けないようだ。ある数年前の研究によると、ヒトの場合は同じ遺伝子が他の細胞型で活性化すると、極めて深刻な疾患を引き起こし、患者の軟部組織(筋肉や腱、靭帯)は徐々に骨化してしまう」

猫の柄は不思議だらけ

 茶トラ猫は何千年も前から生息している。古代エジプトの墳墓の装飾にその姿があり、一部の猫のミイラは茶トラ猫だったとみられる。

「ハリー・ポッター」シリーズをはじめ、現代のポップカルチャーにはよく登場するが、ネコ科でオレンジの毛色はより珍しいという事実に変わりはない。

 オレンジ遺伝子の特定は、色素生物学分野の新たな経路を示している。ARHGAP36は従来、毛包発達に果たす役割が知られていた。色の形成への関与は新発見だ。

 今回の2つの研究はいずれも査読前で、生物学プレプリントサーバーのbioRxiv(バイオアーカイブ)で公開されている。