仮に、日本に進出してきた企業が、利益を円で稼いだとしよう。円安・ドル高で時間の経過とともに円建ての利益が減価するとなれば、その企業はすぐに円からドルに資産を交換するだろう。それは円安圧力である。もっと言えば、通貨が減価する国自体、収益性は低いと見られ、投資先としては不利なことになる。
「なぜ、日本企業の賃金は上がらないのか?」という理由の1つは、国内の成長力が乏しいからだ。企業にとって日本人に多くの給料を支払うメリットが少ないからだ。
上場企業では、1億円以上の役員報酬を開示するルールになっている。2022年3月期には、それに該当する企業数は287社663人であった(東京商工リサーチ調べ)。報酬のベスト10人のうち4人が外国人であった。
個別の開示情報を見ると、多くの外国人役員が高い報酬をもらっていて驚く。この内外価格差は、一体何が原因なのだろうかと考えさせられる。ある外国人役員は、社長よりも報酬が高かったりする。少し屈辱的な気分もする。
外国人役員が高報酬をもらう理由は、内なる力学ではなく、外からの力が働くからだ。もしも、その役員に日本人並みの報酬しか与えなかったならば、海外企業に引き抜かれてしまうだろう。外国人役員の相場は、日本人とは別物なのだ。日本人の社長は、泣く泣く「日本人相場」に据え置かれているケースもあるようだ。
しかし、それは好ましいことなのかと筆者は疑っている。社長の給与を低くすることは、年収の序列の最高位の待遇を下げるに等しい。社長より、他の取締役の報酬は低くなる。役員よりも部長の方が低い。成果給などと称していても、序列が平社員の人は部長の給料を絶対に抜けないなどという不文律が罷り通っている会社も多いようだ。
だから、社長の給料はできるだけ高くするべきだ。このアイデアは、日本の会社の給与を全体的に高めるための有効な策である。
世界で戦える「高度人材」が
日本に足りない!
なぜ、外国人役員の給料を高く設定するのかについては、合理的な理由がある。その企業が海外事業で高報酬を稼ぐためには、その役員に腕を振るってもらわなくてはいけないからだ。