え!そんな方法で?一流エコノミストが大真面目に提案する「ポップでユニークな賃上げ促進策」写真はイメージです Photo:PIXTA

政府は2020年代中に最低賃金を全国平均1500円に引き上げる目標を掲げている。物価高騰への対応が背景にあるが、実現には至っていない。エコノミストの熊野英生氏は、日本企業の体質が賃上げの障害であると指摘し、企業意識の改革が鍵であると主張している。※本稿は、熊野英生『インフレ課税と闘う!』(集英社)の一部を抜粋・編集したものです。

なぜ賃金が増えないのか?
日本と南欧の共通点

 OECD加盟国の平均賃金の推移を見ると、ほかにも日本と同じように平均賃金が増えない国があることに気づく。イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャである(図表2-2-1)。

 南欧諸国の4ヵ国は、日本に似ている。日本と南欧4ヵ国の共通点は、まず政治的基盤の類似性が挙げられるが、それを除くと人口高齢化率が高いことである。日本は世界一で28.7%(直近2022年12月29.0%)。それに続き、イタリア(23.6%)、ポルトガル(23.1%)、スペイン(20.3%)となっている。

図表1:平均賃金の国際比較同書より転載
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 この高齢化率は、その国の平均年齢とも重なる。日本は、全人口の平均年齢(中央年齢)は48.4歳(2020年)で、世界一である(国際機関の比較データでは、55.4歳のモナコが1位で、日本は2位というものもある)。

 平均年齢が上がると賃金が下がる理由は、賃金の低いシニア労働者が多く労働参加していて、その人たちが非正規形態、あるいは自営業で働いていることの反映だろう。同じようなことが、南欧諸国にもきっとあるのだろう。