外国人役員は、その会社の序列とは関係なく、成果を求められていて、海外事業を成長させるために必要とされているのだ。
これは、単に英語や現地語が話せればよいというレベルではなく、法務・会計といった専門知識や交渉力を身につけ、現地でビジネスを成長させた経験的ノウハウを外国人役員が備えているからにほかならない。高度人材とはそうした人々のことを指す。
日本人の中に同列のことをこなせる人物がいれば、企業はその人物には外国人役員並みの高報酬を支払うべきだろう。残念ながら、我が国にはグローバルに事業展開できる高度人材は少ない。そうした人材層が育っていけば、外国人役員だけが破格の報酬をもらっているという格差をなくせるだろう。
こうした格差問題をなくすには、日本をもっと成長する国に変革することだ。
日本に多くの外資系企業がやってきたとしよう。すると、日本に来た外資系企業は、日本人の幹部職員に高報酬を支払うだろう。外資系企業は、日本での事業を広げるために、その幹部職員を必要とするからだ。このロジックは、外国人役員に高報酬を支払っている日本企業と同じだ。

かつて、金融業界では一度だけ対内直接投資のブームが起こりかけたことがあった。1983~1988年頃のことだ。当時、「円の国際化」が叫ばれていた。在日外国銀行の支店が多数開設された。1985年はプラザ合意があって、超円高が起こった時期でもある。
当時の経済雑誌のバックナンバーを読んでみると、内外企業が東京に集まってくる「東京一極集中」がいかに凄いものだったのかがよくわかる。日本人の中には、外資系銀行から高報酬を得て、都心の高級住宅地に住んだ人もいた。その原動力は、日本への海外からの成長期待であった。
翻って、現在の日本にはそうした機運がない。「均(ひと)しからざるを患(うれ)う」(『論語』李氏篇)ばかりでは、ジリ貧が進む。日本の政治の役割とは、そうした流れに歯止めをかけることだ。
成長しなくなった日本を再びビジネスチャンスが豊富な国に変革することが、リーダーの使命だ。