プラスチック規制の遅れが
日本食ブームに水をさす恐れも
プラスチック規制を含む食品衛生法は厚生労働省が所管している。私はてっきり厚生労働省が早く世界に追いつけるよう業界や世論を啓発するために、この調査を依頼したと思い込んでいた。しかし、報告書の表紙を見ると「農林水産省補助事業」と書かれている。
農林水産省はなぜ、よその省が所管しているプラスチック食品容器規制の調査をJETROに頼んだのだろうか。
農林水産省は日本の農水産物や食品の輸出を後押ししており、世界に広がる日本食ブームを好機ととらえていた。2012年、「和食」を無形文化遺産に登録するよう政府がユネスコ本部に申請し、翌年に登録されると、いっそう後押しに力を入れた。
2015年にイタリアのミラノで開かれた国際博覧会(万博)は歴史上初めて「食」をテーマの1つに掲げた。農林水産省は、経済産業省とともにミラノ万博の「幹事省」となり、日本館の建設や展示の企画、企業への参加呼びかけに努めた。日本館を訪れた人は228万人にのぼり、展示デザイン部門で金賞を受賞した。

ミラノ万博をきっかけに欧州の日本食ブームに一段と弾みがついたことは、バルセロナの私も感じていた。しかし、農林水産省はEUがプラスチック食品容器への規制を強めつつあることを心配していただろう。私の店でも日本の食品を販売しているが、麺類やソース、マヨネーズ、みそ、しょうゆなどプラスチック容器に入ったものがほとんどだ。
日本のプラスチック規制が世界の主流に追いつかなければ、せっかく勢いを増しつつある日本食ブームの障害になりかねない。だから農林水産省はEUが規制の第2次改訂を打ち出す2020年に合わせてJETROに調査を頼んだのではないか。
私のこの推測は間違っているかもしれない。しかし、日本食をもっと世界に広めるには海外のプラスチック規制から目をそむけることはできないと思う。