OPN2は網膜の杆体(かんたい)と呼ばれる細胞に存在し、我々が暗い夜でも遠くの星を見ることができる、非常に感度の高い光受容体です。その代わり、この光受容体では色が見えません。
部屋の中でも、最初は色がついていても、暗くすると部屋の色が消えてしまうことにお気づきのことと思います。これはOPN2という、暗いところであっても見える光受容体が作動し始めると、色を感じなくなってしまうからです。
この光受容体の特徴は、空間分解能が低い、すなわち、細かいところまでよく見えない、ということです。暗いところでは本とか読めませんよね。
一方、OPN1は網膜の錐体と呼ばれる細胞に存在し、ブルー・グリーン・レッド、3つの光受容体からなっていて、色を感知することができます。この3色を使ってすべての光の色を感知することができるのです。
これは、3色の絵の具を使ってすべての色が作られるのとまったく同じ原理です。この光受容体は、細かいところまで見えてさらに色も見えるのですが、明るいところでしか機能しません。面白いですよね。
では、ブルー・グリーン・レッドとは何でしょうか?
ブルーとは約420ナノメーター、グリーンとは約534ナノメーター、レッドとは約564ナノメーターの波長の光をさしています。
すなわち色というのは、光の波長のことだったんですね。
そのちょっとした光の波長の差を外界の情報源として使って我々は生存確率を上げてきたわけです。
血液や熟した赤い実が見える目が
人類の生存確率を高めていった
ちょっと脱線しますが、このOPN1のグリーンとレッドは、けっこう近い波長を認識しています。元々、我々はブルーとグリーンを感知する光受容体しか持っていなかったのですが、ブルーとグリーンしかないと、例えば木になったリンゴが赤くなったり、さくらんぼが赤くなったりしたものを区別することができません。
グリーンとレッドは波長的にはそれほど遠くないのですが、我々の生存にとっては、熟した実がそこにあるぞという、重要な情報を与えてくれることになります。
また、我々の血液が赤い色をしているのも、この赤を特異的に検出することで、実が熟したからそれを食べようとか、少しの傷でも赤い血が出て、危険なことが起きていると自身で察知するのに非常に重要だったと考えられます。